安田顕、“役者”を突き詰めていく中で見えてきたもの 「作品が輝くために何をすべきか」

日本テレビ系日曜ドラマ枠で放送中の『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』は、“元天才子役”の新人芸能マネージャー・神田川美和(川栄李奈)の奮闘を描いた”人生リベンジコメディー”だ。
安田顕は本作で美和の上司・犀川真一郎を演じている。芸能界を題材にした本作について、ベテラン俳優の安田は何を思うのか。演技のあり方について「最近ようやく見えてきた」という安田が心境を語った。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
『ダメマネ!』の撮影についての印象

――これまで撮影されてきて、どんな感想をお持ちですか?
安田顕(以下、安田):現場の雰囲気はすごく明るいです。いわゆる“瑠東組”は初めてですけど、一緒にものを作っている感覚がすごくあります。瑠東(東一郎)さんは本当に素敵な監督なので、コメディを作りやすい、和やかな現場になっているなと思います。あとは川栄李奈さんが座長としていろんな方と接する中で、“その人に合わせた自分”でいてくれるんです。いつも笑顔ですし、本当にいい現場だと思います。
――安田さんの前では、どんな川栄さんなんですか?
安田:こんなおじさんの一言一言に笑ってくれます。ありがたいです。
――(笑)。作品の印象はいかがですか?

安田:サクサク進んでいくので観やすいですよね。川栄さん演じる神田川美和は元天才子役で、あることがあって一度挫折して、マネジメントという形で芸能界に戻ってくるわけですけれども、切り取り方によっては今までの人生が悲劇にも捉えられると思うんです。でも、そこが喜劇であると。ただただ面白いだけではなくて、そういったことを笑いに包んでいるところが、この作品の面白さなのかなと思います。
――東京スカパラダイスオーケストラさんによる主題歌「私たちのカノン(VS. Chevon)」についても聞かせてください。
安田:「カノン」の旋律には、人を落ち着かせる効果があると聞いたことがあります。そして、スカパラさんらしいメロディに、Chevonさんの良さも加わったこの楽曲は、決して「カノン」ではないんだけど、「これが私にとっての『カノン』なんだ」と。もちろん、いろんなふうに受け取れるけれども、なにより「ドラマのために考えてくださった」ということが、すごくうれしいですよね。
――安田さんは音楽にも精通されていますが、ドラマにおける楽曲の役割をどう考えていますか?
安田:やっぱりエンターテイメントですから、絶対に必要なものだと思います。「実際の生活には音なんか流れていないじゃないか」「泣きのシーンを煽っても仕方がないじゃないか」と思ったりする人もいるかもしれないけれど、スーパーマンが空を飛ぶときに音楽がなかったら困るじゃないですか。E.T.が自転車で飛ぶときに、ジョン・ウィリアムズが流れないとイヤじゃないですか。映画やドラマの音楽は素晴らしい効果を与えてくれているし、人を感動させる曲っていっぱいあると思うんですよ。それが劇伴として流れるわけですから、観ている方の気持ちをより深くさせてくれる、必要不可欠なものだと思います。

――ちなみに、ご自身にとってはどんな役割がありますか?
安田:たとえば『下町ロケット』(TBS系)に出演させていただいたときには、服部隆之さんが作られたあのメロディが自分を鼓舞させましたね。ドラマの撮影中にも、ロケットが昇っていくような、人を高揚させるような旋律がリフレインしていました。それから『小さな巨人』(TBS系)に出させてもらったときにも、やっぱり平井堅さんの楽曲が流れていました。それに、すべてではないけれども、自分が好きな作品というのは、見終わった後に主題歌がリフレインしていることってありますよね。シルヴェスター・スタローンがボクシンググローブをつければ「ロッキーのテーマ」が流れるし、自分自身、「よし、頑張るか」というときに「ロッキーのテーマ」が流れてくることもありますから。音楽の力は、やっぱり大きいですよね。
安田顕が「ようやく見えてきた」役作りの真髄

――お芝居の話も伺いたいのですが、『ダメマネ!』も含め、安田さんが新しい作品に入るときに必ずしていることはありますか?
安田:思いつかないなぁ。でも、今回は僕からお願いしたのもあるけれど、ちゃんとバックボーンを設定してくださったので、それに沿う形でやっていけたらいいなとは思いました。あとは準備というか、自分の中でセリフを覚えたり、「これはこうなんじゃないか」というある程度の考えは持っていきますけど、それだけだと可能性が狭まりますし、なにより作品は監督が作り上げるものであって、監督のもとにその世界観はあるわけですから。いろいろと準備しながらも、現場ではフレキシブルに対応できるようにしたいなとは常に思っています。
――ご自身の中で役を作っていくときには、どういった流れで?
安田:バックボーンから想像はしますけど、やっぱりやってみないとわからないですね。現場で「あ、そうか。こういう人なのか」と感じながら、雰囲気が出来上がるっていうのかな。具体例じゃなくて申し訳ないけれど、ほんのちょっとのセリフのやり取りだったり、言い方だったり。やっぱり現場に行ってみないと、出来上がっていかないかなとは思います。
――最初からそういった役作りはできないですよね?
安田:とある先輩と舞台の稽古をしていて、本番2、3日前に「だいぶ見えてきたな。でも、(徐々に手をクロスさせながら)突き詰めていくと、頂点を超えたあとに必ず広がっていくから」と仰るんです。その言葉の意味を当時は理解しているつもりでも、「ああ、こういうことか」とたぶん思えていなかったと思うんですよ。突き詰めるだけでは、"木を見て森を見ず"という状態ですよね。言ってみれば、その頃の自分は演じる上でのカタルシスを求めすぎていたのかな、という気はします。でも、「そうじゃないよ」って。もちろん突き詰めることは必要だけど、そのときに周りをちゃんと見てごらんなさいと。たとえば撮影現場であれば、カメラマンさん、照明さん、衣装さん、メイクさん、本当にいろんな方たちがいる。その中で一つのものを作っているんだということが、最近ようやく見えてきたというか。だからこの感覚を大事にして、これからの仕事に臨んでいきたいです。今はまだ、その途中の段階です。

――安田さんのキャリアをもってして、「ようやく見えてきた」という捉え方に驚いてしまいました。
安田:遅いですよね(笑)。自分でも遅いなと思います。
――いやいや、あらためて本当に奥が深いものなんだなと。
安田:だから、しっかりと使い分けなきゃいけないなとは思います。自分の中にいろんなストックがあったときに、間違ったストックを出しちゃったらどうしようもないから。そこに適したストックをちゃんと出していかなければいけないな、とは思いますね。




















