『あなたを奪ったその日から』秘密と嘘をめぐる考察 “紘海”北川景子が敵の懐に飛び込む

『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)第5話では、秘密と嘘をめぐって、一人の人間が持ついくつもの顔が描かれた(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
スーパー「スイッチバック」に転職した紘海(北川景子)の配属先はお客様相談室。勤務初日から紘海は苦情電話を受ける。最初はS言葉、次にK言葉、最後はお礼で締める対応のイロハを教わった。相談室は常務である結城(大森南朋)の肝いりの部署で、現場経験のない紘海が配属されたのは、結城の意向が働いているものと思われた。
紘海がスイッチバックに就職したのは、結城が隠ぺいした事実を突き止めるためだったが、毎月のように結城宛に誹謗中傷の投稿が寄せられていた。投稿があったのは碑文谷店で、偶然にもYUKIデリでアレルギー食材の混入があったのが碑文谷だった。結城から投稿者を調べる許可を得た紘海だったが、犯人は意外な人物だった。
物語中盤で舞台となるのは、コンプライアンス担当部署で、よりによってと言うか、運命に誘われるかのように来るべくして来た感がある。外部のクレーマーに対処する相談室は社内の不祥事を知るのも早く、結城と日常的に接点がある。敵の懐に飛び込んだ紘海にとって願ってもない環境だ。
『あなたを奪ったその日から』は秘密と嘘から成り立っていて、サスペンスの源泉を供給している。端的に人間は他人の考えていることがわからないし、嘘はいつかバレる。第5話は、そのほころびが物語に新たな裂け目を生じさせていた。
紘海は「この世界には2種類の嘘がある」と述懐する。それは「誰かを陥れるための許されない嘘」と「そして誰かを守るための優しい嘘」だという。嘘は相手から見ると、真実を隠す秘密になる。秘密にしていたのは人を陥れる嘘なのか、それとも守ろうとする誰かなのか? その答えを知るのはただ一人、嘘をついた本人だけだ。

























