『波うららかに、めおと日和』芳根京子の泣きの演技は天下一品 なつ美と瀧昌の縮まる距離

各家に伝わる白黒写真。そこに写る両親や祖父母、曾祖父母にはどのようなストーリーがあったのだろう。「もしかしたら、こうだったかもしれない」を見せてくれるのが、なつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)だ。『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)第3話は、今まで以上に江端家の“はじまり”を感じさせる回だった。
まだ見ぬなつ美の幼なじみ・瀬田(小宮璃央)への嫉妬に駆られ、初夜を完遂させようとした瀧昌。だが、なつ美が自分の帰りを心から待ち望んでいてくれたことを知り、思いとどまるのだった。翌日、瀧昌はなつ美に自分の生まれ育った街を案内する。
転びそうになったなつ美の腕を瀧昌がとっさに掴んだのをきっかけに、手を繋いで歩く2人。こんなふうにゆっくり距離を縮めていけばいい。焦る必要などないのだ。これから何十年と2人は共に生きていくのだから。けれど、どうしても頭をよぎってしまうのは、第1話で深見(小関裕太)が瀧昌に放った「先がいつなくなってもおかしくない仕事だって自覚があるんだと思ってた」という台詞だ。

上官の邦光(小木茂光)に背広を作るように言われた瀧昌は、なつ美とテーラーを訪れる。2人を出迎えてくれるのは店主(前原滉)の幼い息子(湯本晴)。かわいい夫婦×かわいい子供のかけ合わせは、最強かわいいに決まってる! 特に子供の扱いに慣れていないながらも一生懸命向き合う瀧昌の姿は、なつ美が悶絶するのも納得の愛らしさ。2人に子供が生まれた未来の光景も想像させ、思わず顔がほころぶ。

しかし、その未来が当たり前に来るとは限らない。テーラーを訪れた夜、なつ美は店主の子供とこっそり選んだトンボ柄のカフスボタンを瀧昌にプレゼントする。トンボ柄には「武運長久」の意味があり、なつ美は瀧昌のお守りになればと考えたのだ。瀧昌はその気持ちとともにありがたく受け取るが、「戦地には行かないのに重いかな」というなつ美の言葉を聞いた途端に顔が曇る。
第一次世界大戦後、各国が保有する主力艦の比率を定めた海軍軍縮条約に調印。この条約は無制限な軍拡競争を抑制し、国際社会の安定を図ることが目的だった。ところが、当初より自国の保有比率に不満を抱いていた日本は1936年に条約から脱退。調印から脱退までの約15年間は「海軍休日」と呼ばれ、制限から解放された日本は戦争へと突き進んでいくこととなる。
つまり、この先は何が起きてもおかしくない状況だった。それでも任務には向かわなければならない。次に旅立つ日を明日に控えた瀧昌は、なつ美を写真館に誘う。郁子(和久井映見)にとびきりおしゃれにしてもらったが、瀧昌がもうすぐいなくなることを悟ったなつ美は笑顔で写ることができなかった。

瀧昌への想いが大きくなればなるほど、離れがたくなってゆく。涙がこぼれないように瞬きを必死で抑えるが、とうとう堪えきれなくなって両手で顔を隠すなつ美。瀧昌に肩を抱かれ、目を伏せた瞬間に左目から溢れた涙が頬を伝う。やはり芳根京子の泣きの演技は天下一品だ。一連の流れから、海軍士官の妻として相応しくあろうとするなつ美のいじらしさと、それでも抑えきれぬ心からの寂しさが伝わってきて胸が締め付けられた。





















