『スロウトレイン』キャスティング秘話や裏話も 野木亜紀子と土井裕泰が語る“時代の変化”

野木亜紀子と土井裕泰が語る“時代の変化”

台本の行間に温かな「空気」が映る、土井裕泰監督への信頼

ーー野木さんから見た土井監督の魅力についてもお聞きしたいです。

野木:演出から感じられる差を言葉にするのはとても難しいんですが、土井監督については必ず3割増しぐらいで良いものが上がってくるっていう信頼感があります。『スロウトレイン』をオンエア前のデータで確認したとき、いろんな仕事が重なっていて疲れていたんですが、繰り返し観てその度に「楽しいなーいいなー、和むなー」と癒やされました(笑)。脚本への理解が深くて、温かな視線があって。撮るべきものが過不足なく撮られているのはもちろんですが、ちゃんとその世界の空気が映っているというか。お気に入りのシーンはたくさんあるんですけど、3人が釜山の海を見つめているシーンとかすごく好きでした。

ーー台本には「黙って海を見つめている3人」「最後の時間を惜しむように」と書いてあるところを、潮が葉子と都子の腕を組んでいましたね。

土井:『スロウトレイン』は渋谷家の3きょうだいに流れている時間の話だから。潮を真ん中にしたあの3人の並びがここまでの彼らの歴史そのものなんだっていうところをちゃんと示しておきたかったんですよね。最初に江ノ電にこの並びで座っているところから始まって、釜山の海を見ているシーンで締めたかったんです。彼らの人生の句読点になるように。

ーーなるほど。そうした行間の部分に差が出るんですね。

野木:それが監督業の醍醐味なのでは?

土井:いろんなスタイルの監督がいると思いますけど、僕は脚本についても演技についても、自分のイメージにすべて当てはめるんじゃなくて、みんなが持ってきたものをチューニングしていくっていうか、現場で作り上げていくっていうのが好きなタイプなんですよね。むしろ、何が出てくるのかっていうところに興味がある。

ーーまるで指揮者のようですね。

土井:とても近い仕事だと思いますね。野木さんがスコアを書いて、それを演奏する人たちがいる。それは俳優だけじゃなくて、スタッフもそうなんですけど。みんなが楽器を持ち寄ってどんな音を出してどんな曲になるのか、セッションしながら現場でつくりあげていく感覚は似ていると思います。

ーードラマを30年以上つくられてきたなかで、どのように感覚をアップデートされてきたのでしょうか?

土井:30年以上とか言われるとなんだか本当に大ベテランみたい……。

野木:何言ってるんですか、大ベテランですよ(笑)。

土井:まあ、長くやってることは、どうにも否定できないんだけど(笑)。でも個人的に気をつけていることといったら、わかったような顔をしないってことですかね。この仕事は時代に合わせて自分をアップデートしていくことがとても必要なんだけど、新しいものをやるときにいったん初期化して、その時その時の「今」をちゃんと学ぶことは心がけています。若い人たちの恋愛を描くとしても、必ずその向こうにある社会も同時に描かれるのであって、そんなときに自分の経験値も自然に生かされていくし、あくまでも大事なのは、その時代を生きている人たちに向けて何が描かれるべきかということだから。そういう意味ではこの『スロウトレイン』では、本当に自分の思うままにシンプルで豊かな作業ができたと感じています。

ーーまた、このタッグで作品をつくりたいというお話は?

野木:ずっと言ってはいますよね。土井さんとは原作ものもオリジナルもやってきて、どちらの面白さも大変さも経験してきたので。その上で、次はどんな作品になるかお楽しみに、ということで。

土井:何年か先に。ぜひ実現させたいですね。それまでは『スロウトレイン』を何度も観て、楽しんでいただけたらなと思います。

■リリース情報
『スロウトレイン』
5月30日(金)Blu-ray&DVD発売

【Blu-ray】
価格:6,380円(税込)
品番:TCBD-1751
仕様:2025年/日本/カラー/本編111分+特典映像63分/16:9 1080i High Definition/Disc1:2層、Disc2:1層/音声:リニアPCM2chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/2枚組

【DVD】
価格:5,280円(税込)
品番:TCED-8014
仕様:2025年/日本/カラー/本編111分+特典映像63分/16:9LB/Disc1:片面2層、Disc2:片面1層/音声:ドルビーデジタル2.0chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)/2枚組

<特典映像>
制作発表会見
ドラマナビ
オールアップ集
SPOT集

<封入特典>
ブックレット(28P)

出演:松たか子、多部未華子、松坂桃李、星野源、チュ・ジョンヒョク、松本穂香、池谷のぶえ、倉悠貴、古舘寛治、宇野祥平、飯塚悟志(東京03)、菅原大吉、中村優子、毎田暖乃、リリー・フランキー、井浦新
脚本:野木亜紀子
音楽:長岡亮介
プロデューサー:小牧桜
スーパーバイジングプロデューサー:那須田淳
協力プロデューサー:韓哲、益田千愛
演出:土井裕泰
製作著作:TBS
発売元:TBS/TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
©TBS

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