速水奨の“低音ボイス”が物語に厚みを生む 『名探偵コナン』諸伏高明役で発揮した存在感

速水奨の“低音ボイス”が生む物語の厚み

 低い声には、人を惹きつける力がある。

 ただ言葉を届けるだけでなく、その響きそのものが心に染み込み、余韻として深く刻まれる。そうした低音ボイスならではの深みを、長年にわたり体現してきたのが、速水奨だ。その唯一無二のバリトンボイスは、出演する作品ごとに強い印象を残し、シーンの空気を一変させるだけの存在感を持っている。

 現在公開中の劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』では、諸伏高明役を担当。舞台となる長野県の雪山で繰り広げられる事件を通して、大和敢助の過去や長野県警の面々が描かれる本作において、諸伏もまた物語を動かすキーパーソンとして存在感を放っている。

 彼の台詞には、『三国志』の教訓や中国の故事を引き合いにした含蓄のある言い回しが多く、知性の中に熱を宿す人物像が浮かび上がる。

 この“語り”の力は、『鬼滅の刃』の産屋敷耀哉の鎹鴉役や、「ヒプノシスマイク」の神宮寺寂雷役でも顕著だ。低く艶やかな声で放たれるひと言が、シーン全体の空気を一瞬で塗り替えることさえ珍しくない。そしてその表現力は、映画館という音響に優れた空間でこそ、最大限に生きてくる。

 もともと劇団四季で俳優として活動していた経験を持つ速水は、声優としてのキャリアにおいても、キャラクターソングのみならず、個人名義での音楽活動も展開するなど、“声”を媒介にジャンルを越えた表現を広げてきた。

【低音ボイス声優】一番低いのは誰!?予想を超える結果が!!

 そんな速水の声が、いかに低いかを象徴するエピソードもある。テレビ朝日のYouTube番組『動画、はじめてみました』では、声優の増元拓也・安元洋貴とともに、「もっとも低い声の周波数」を測定する企画に参加。成人男性の声が一般に150Hz前後とされる中、速水はその常識を覆す“17Hz”という驚異的な数値を記録した。

 数字だけではピンと来ないかもしれないが、これはピアノの最低音よりも低く、マイクが拾える限界に近い周波数だ。多くのテレビやスマートフォンのスピーカーでは20Hz以下の音が再生されないことを考えると、その声の深さは特筆に値する。

 「声そのもの」がコンテンツとして成立する今、低音ボイスは確かな存在感とともに、多くの人を惹きつけてやまない。実際、津田健次郎・杉田智和・武内駿輔らによるYouTubeの人気番組『低音火傷』のように、深みのある声を持つ声優にフォーカスした企画も登場している。

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