岡田惠和が描く、大人たちの青春と“死”の気配 『最後から二番目の恋』から紐解く作家性

『最後から二番目の恋』から紐解く岡田惠和

「いくつになっても、未来に恋していたい。」

 第1作目の最終回におけるヒロインのモノローグから取ってきたキャッチコピーに、心のひだを震わせた人も多いのではないか。

 

 2012年と2014年に放送され、好評を博したドラマ『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)がダブル主演の小泉今日子と中井貴一や、坂口憲二、内田有紀、飯島直子ら主要キャストが揃った形で11年ぶりに再始動。『続・続・最後から二番目の恋』として“月9”枠で放送されている。

 鎌倉を舞台に、小泉演じるテレビ局のドラマプロデューサー・千明と中井演じる市役所職員・和平をはじめとする、人生の酸いも甘いもかみ分けた大人たちの青春を描く本作。第1作目から現実世界と同じ時間が流れており、登場人物たちの年齢はもちろん、その立場も関係性も少しずつ変化してきた。

 だが、作品の魅力は不変だ。ドラマチックな出来事はそうそう起きないが、演技巧者たちが繰り広げる“生きた”会話劇に没入させられる。他愛もないけれど、軽快でユーモアがあり、声に出して笑ってしまうこともしばしば。でも時々、なぜか涙が出そうになるのは、この時間が永遠ではないことを知っているからかもしれない。

 映画『余命10年』やNetflix『さよならのつづき』など、脚本家・岡田惠和はこれまで生死を題材とした作品を数多く手がけてきた。本作もどこかで“死”を意識した脚本になっており、それを最も象徴するのが、坂口演じる長倉家の次男・真平(坂口憲二)の存在だ。真平は11歳の時、脳に腫瘍が見つかり、手術を受けたが、次に再発したら助かる可能性は低いと言われている。

 死と隣り合わせの人生。でも、それは私たちとて例外ではない。今作の初回にてコロナ禍の状況が回想で描かれていたが、感染した千明の「怖いよぉ」という悲痛な叫びに胸が締め付けられた人も多いだろう。あの時、私たちは誰もが「もしかしたら死ぬかもしれない」という恐怖を味わった。

 コロナは一旦収束したものの、千明が密かに“アホ部長”と呼んでいた上司や、和平の名前を不倫のアリバイ作りに使っていた市役所の同期のように、ある日突然、病気や事故で亡くなってしまう人もいる。第1作目から出演していた一条役の織本順吉氏が2019年に亡くなり、坂口が難病でしばらく芸能活動を休止していたことを考えても、こうして続編が実現したこと自体、奇跡に近い。

 だからこそ、より千明たちの何気ない日常が愛おしく感じられるが、本人たちはあまり悲観していない。和平は定年を迎え、千明も還暦間近。否応なく終わりが見えてくる年齢だが、いつだって彼らは新たな恋や自分なりの目標に向かって邁進している。全然、人生を引退などしていなくて、まだまだ現役だ。そのぶん失敗もするし、傷つくし、恥ずかしい思いもする。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる