中井貴一の人間味がスパイスに 『最後から二番目の恋』“実年齢”を生きるキャストの魅力

『最後から二番目の恋』中井貴一がスパイスに

 子どもの頃観ていたドラマの中の世界は、“将来あるかもしれないこと”が詰まっていた。甘酸っぱい恋や周りと協力して大きな仕事を成し遂げる瞬間を自分もいつか経験するのだとワクワクしていた。しかし最近では、ドラマの内容や登場人物のセリフが自分の経験や記憶と混ざり合って、さまざまな感情が呼び起こされるようになってきた。そんな中で現在放送中の『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)は久しぶりに胸が高鳴るような気持ちで観ることができている。

 それはきっと、筆者が吉野千明(小泉今日子)や長倉和平(中井貴一)よりも人生経験が浅いために、彼らの生き方を“将来あるかもしれないこと”として観ることができるからだろう。市役所に再任用されて、「今日が私の第二の人生のスタートと思って」とさらりと挨拶できる和平も「定年前にさ、最高傑作を作ってやろうかな」とドラマの企画を考えようとする千明もそれぞれのカッコよさを持っていて、“こういう大人になりたいな”と思わせてくれる。

 本作は、2012年に放送された『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)シリーズの3作目。とはいえ、申し訳ないことに筆者は1作目、2作目を観てはいなかった。そのため、事前に持っていた情報といえば、小泉今日子が演じるテレビ局プロデューサー・千明と、中井貴一が演じる鎌倉市役所で働く公務員の恋を描いたロマンチック&ホームコメディということだけ。小泉と中井のような色気がある2人が主演ということで、“大人同士のロマンチックな恋”の間に、その家族や友人とのクスッと笑えるドラマが挟まることを想像していた。だが、実際に観てみると、良いことも悪いことも知り尽くした気の置けない友人との日常を中心に、その周辺の人々を巻き込んだドタバタホームコメディだった。

 このほんわかしたムードを作り出している要因の一つが、中井の真面目すぎる会話への絶妙な切り返しではないだろうか。第2話で和平は、今では上司であるはずの田所勉(松尾諭)から、突然「お願いがあります」「相談に乗ってください!」と、まるで部下が泣きつくような仕草で懇願される。付き合いの長い田所の魂胆がわかっていた和平は淡々と断っていったのだが、やり取りは次第にコントのようなかけ合いに。このドラマのコミカルさと和平の温厚な人となり、そして彼が仕事場でどれだけ信頼されているかがわかる場面だった。

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