『九龍ジェネリックロマンス』鯨井令子のキャスティングの妙 白石晴香&山口由里子の対比

一方、鯨井Bを演じるのは山口由里子だ。コミックスPVでも令子の声を担当していた彼女は、『ONE PIECE』のニコ・ロビンや『新世紀エヴァンゲリオン』の赤木リツコなど、“影のあるお姉さん”像に定評のある声優だ。白石の令子がどこか可憐さを残しているのに対し、山口の令子は凛とした美しさと憂いをまとい、「同じなのに、まるで別人」というコントラストを際立たせている。
こうした背景を踏まえると、2025年夏に公開される吉岡里帆と水上恒司主演の実写映画にも、ますます期待が高まる。公開された超特報映像では、アニメ版のシーンと実写映像が呼応するように構成されており、作品に通底する記憶と現実の交錯を象徴しているようにも見える。
なかでも期待が高まるのは、アニメで2人の声優が演じ分けた鯨井令子という存在を、吉岡がどう一人で体現するのかという点だ。当然のことながら、実写では表情や声に加えて身体性までもが演技の要素となるぶん、アニメとはまた違ったアプローチが求められる。アニメでは声でより一層強調された鯨井AとB、それぞれの違いをどう立ち上げていくのか。吉岡の演じ分けが、実写ならではの挑戦になることは間違いない。
アニメ、漫画、そして実写映画へと広がっていく『九龍ジェネリックロマンス』の世界。
懐かしさと違和感が同居する舞台で描かれるのは、恋愛というよりも、もっと複雑で、もっと個人的な、誰かを想う気持ちだ。ふたりの鯨井令子が交錯する本作は、現実でもネットでも、自分の“あり方”が揺れやすくなった今の時代だからこそ、胸に響くものがある。
ただのラブストーリーでは終わらないこの作品が、これからどんな形でラストを迎えるのか。その過程を“令子たち”と一緒に見届けるのもまた、ひとつのロマンスなのかもしれない。
眉月じゅんの同名漫画をアニメ化したミステリーラブロマンス。ノスタルジー溢れる街・九龍の不動産屋で働く鯨井令子は、失くした記憶、もう1人の自分の正体、そして九龍の街に隠された巨大な秘密と向き合っていく。
■放送情報
TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』
テレ東系にて、毎週土曜23:00~放送
キャスト:白石晴香(鯨井令子役)、杉田智和(工藤発役)、置鮎龍太郎(蛇沼みゆき役)、坂泰斗(タオ・グエン役)、古賀葵(楊明役)、鈴代紗弓(小黒役)、河西健吾(ユウロン役)
原作:『九龍ジェネリックロマンス』眉月じゅん(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
監督:岩崎良明
シリーズ構成・脚本:田中仁
キャラクターデザイン:柴田由香
美術監督:金子雄司
OP主題歌:水曜日のカンパネラ「サマータイムゴースト」
ED楽曲:mekakushe「恋のレトロニム」
アニメーション制作:アルボアニメーション
製作:「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
©眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
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