水沢林太郎、“橋渡し役”を経て飛躍のとき 『なんで私が神説教』で見せた静かな強さ

水沢林太郎、『なんで私が神説教』で飛躍

 俳優・水沢林太郎が、いま確かな存在感を広げつつある。『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)を経て、『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)では大河初挑戦、『なんで私が神説教』(日本テレビ系)では、生徒役ながら難しい立ち位置を静かに体現。着実にキャリアを積み上げてきた彼が、ここにきて本格的な飛躍のタイミングを迎えている。俳優としての確かな蓄積と、映像作品ごとに磨かれてきた表現力が、ようやく広く届き始めた印象だ。モデル出身という枠を越え、俳優として歩んできた水沢のこれまでと現在地をたどりながら、さらなる成長への期待を込めて見つめたい。

 14歳で大手芸能事務所・研音に所属し、「MEN'S NON-NOモデルオーディション」では史上最年少で準グランプリを受賞。長身と洗練されたルックスを活かし、モデルとしては華々しいスタートを切った水沢。だが、水沢林太郎のキャリアは、華やかさだけでは語れない。俳優業においては、慎重に、着実にキャリアを積み重ねてきたからだ。現場での実践を通じて、一つひとつの役と真摯に向き合ってきた努力が、今の確かな演技に繋がっている。

 『グッドワイフ』(TBS系)では、わずか数十秒の出演。その後も、『俺の話は長い』(日本テレビ系)や『ブラック校則』(日本テレビ系)といった作品群で、主役を引き立てるポジションを丁寧に務めながら、演技の基礎をじっくりと築いていった。表情や間合い、身体の使い方など、芝居の土台を積み上げることを怠らなかった姿勢が、静かな信頼感として画面に表れている。

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 2024年には『ビリオン×スクール』で学園ドラマに参加。問題児揃いのクラスの中で、教師と生徒の橋渡し役を自然体で演じ、柔らかいリアクションと心の揺れを繊細に表現した。また、2025年放送の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、江戸時代を舞台に奉公人役として新たな一歩を踏み出している。時代劇というフォーマットに挑むことで、言葉遣いや所作といった演技の幅も広がっているように見える。

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 いずれも主役というわけではない。だが、水沢の歩みには一貫して、与えられた場で確実に自らの存在を刻む強さがある。派手な露出よりも、地道な積み重ねとでも言えばいいのだろうか。それが彼という俳優の、最も大きな武器になっている。出演シーンの長さに関わらず、目を引く佇まいや空気感が、観る者の記憶に残る。

 そうして培ってきた表現力が、今、大きく花開きつつある。『なんで私が神説教』での水沢は、間違いなくキャリア上のターニングポイントを迎えている。演じるのは、広瀬アリス演じる破天荒な教師・静を、誰よりも早く理解しようとする生徒・七海海斗。一見すれば、学園ドラマによくある先生を理解する生徒という立ち位置だ。だが、水沢の七海は、それだけではない。七海自身も過去に傷を抱えている。中学時代のトラウマ、母親との微妙な関係性――。自分自身が満たされない痛みを抱えているからこそ、教師・静の孤独に敏感に気づき、言葉少なに寄り添おうとする。

 水沢はこの七海という役柄を、過剰な芝居で膨らませることなく、むしろ抑制の効いた演技で深みを与えている。視線の揺れ、言葉を選ぶ間の取り方、呼吸の乱れ。細やかな表現の積み重ねが、七海海斗という人物のリアリティを立ち上げている。決して声高には主張しないが、その場にいるだけで、物語に静かな安心感と厚みをもたらす。水沢林太郎という俳優がこれまで地道に育んできたスタイルが、ここで鮮やかに結実している。

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