のんは“最高”を更新し続けている 『あまちゃん』から『キャスター』に至るまでの進化

のんは“最高”を更新し続けている

 2023年7月の誕生日に、肩書きを「俳優・アーティスト」に改定。より地に足をつけて表現活動を続けていく決意を固める。冒頭で紹介したアルバム『PURSUE』もこの年に発売した。

 柚木麻子による同名小説を映画化、2024年に公開された『私にふさわしいホテル』では、のし上がるためなら手段を選ばない野心家の新人作家・加代子を演じた。こちらは「静かなる狂気」の演技が光った。

 そして2025年4月の、出演3作放送・配信。これらはどれも重要な役どころの助演で、だからこそ演技スキルが問われる。『キャスター』で演じる研究員・楓は、テレビサイズのエンタメにしっかりと即した表現に徹している。『地震のあとで』のかえるくんでにおいては、性別・属性・種族を超越して、いよいよ「概念」というジャンルも演じられるようになった。

『キャスター』©TBS

 特筆すべきは『新幹線大爆破』の運転士・松本である。1975年に公開された同名オリジナル映画では、本作でにおけるのんの役どころである、全乗客・乗務員の命を背負った運転士役を千葉真一が演じている。顔に全身が宿るような千葉の、熱く濃い演技とは好対照で、のんが演じる松本は、ふだん感情が低体温気味で、あまり心緒を表に出さない人物がこうした状況下でどのように対応するのか、というところを余すところなく表現している。さまざまな人間模様が交錯するパニック映画という特性上、運転士だけがスターになってはいけない。運転室のシーンが「ワンコーナー」になってもいけない。そのチューニングを、のんが見事にこなしているのだ。

Netflix映画『新幹線大爆破』Netflixにて独占配信中

 今年はバイプレイヤーとして実にいい仕事をしているのん。独自のリズムを保ちながらも悪目立ちせず、物語の中に心地よい読点(、)を打つ俳優に成長した。『あまちゃん』のアキの頃のピュアネスを失わないまま、巧みな技術も身につけたのん。これからがますます楽しみな俳優である。

『キャスター』の画像

日曜劇場『キャスター』

テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。

■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、堀越麗禾、山口馬木也、黒沢あすか、オクイシュージ、山中崇、相築あきこ、馬場律樹、北大路欣也、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
主題歌 tuki. 「騙シ愛」(月面着陸計画)
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
公式X(旧Twitter):@caster_tbs
公式Instagram:caster_tbs
公式TikTok:@caster_tbs

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