『あんぱん』北村匠海が感情を爆発させる 中沢元紀との本気の衝突から見えた“兄弟の絆”

「こんな情けねえ俺、もうやだよ!」
『あんぱん』(NHK総合)第17話では、嵩(北村匠海)の鬱屈が爆発した。
寛(竹野内豊)と千尋(中沢元紀)の会話を聞いてしまった嵩。医師を継がず法律家を目指すのは、嵩のためではないか。出戻った登美子(松嶋菜々子)は千代子(戸田菜穂)への対抗心からか、嵩に医業を継がせると言い張るものの肝心の勉強はさっぱり。その上、のぶ(今田美桜)の前でも千尋に良いところを持っていかれて、嵩には立つ瀬がない。

嵩は目が死んでいて、どうなってしまうのだろうと胸騒ぎがしたら、案の定というか、のぶと勉強する約束をすっぽかして、嵩は線路にいた。レールに頭を乗せて、汽車が近づいても逃げようとしない。通りがかった草吉(阿部サダヲ)があわてて起こして事なきを得たが、朝ドラで放送していいのかと心配になるショッキングなシーンだった。
でもそのおかげか、感情をしまい込んでいた嵩は思いを声に出して叫ぶ。情けなく感じるのは、自分のみっともなさを自覚しているから。弟に負けるだけならまだしも、気を使われるなんて。情けないし、そう感じる自分の小ささが嫌だと嵩は思っただろう。自己嫌悪の塊になった嵩は感情を持て余していた。

嵩は千尋にはなんでもしてやりたいと思っていて、その気持ちに嘘はない。問題は2人の間に余計なものがありすぎることだ。将来のこと、自分たちを捨てた母、好きな人の存在。それらが嵩と千尋の関係に緊張感をもたらし、誰よりも互いを信頼しているはずの兄弟が引き裂かれてしまう。
嫉妬でぐちゃぐちゃ、プライドがずたずたになった嵩には、千尋の一言で十分だった。筆者にも弟がいるが、兄弟げんかができるのは、ある意味幸せなことである。前週、砂浜で相撲を取った兄弟の本気の取っ組み合いは、互いの胸の内を吐き出して、周囲はさぞかし驚いただろう。2人とも、それまで口にしたことのない本音をぶつけていたのだから。