安田顕の平賀源内はあまりに凄すぎた 『べらぼう』第1章の締めにふさわしい最高の名勝負

『べらぼう』安田顕の源内はあまりに凄すぎた

 そして同時に、源内のために意次にも堂々と意見する蔦重と、ベテラン俳優相手に堂々たる演技で対峙する横浜の成長ぶりが重なって見えた。火事の中で助けた少年・唐丸(渡邉斗翔)、面白い青本を作ろうと盛り上がった鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)、そしてともに夢を見た花の井改め瀬川も。振り返れば、この第1章だけでも、いくつもの別れがあり、そのたびに蔦重が自分のすべきことを見つけ、そして横浜の演じる眼差しにも力強さが宿っていくのを感じた。

 蔦重には、彼らがどうなったのかはわからない。だが「わからない」なら、そこを楽しい想像で補っていくのが蔦重の流儀だ。だから、実際には見ていない源内の最期も「わからない」としていくのだと、書物問屋の須原屋市兵衛(里見浩太朗)に語る。そんな蔦重の思いに触れた須原屋も、源内の心を本という形で生かし続けよう、という。その言葉に堰を切ったようにむせび泣く蔦重に胸が裂かれるような気持ちになった。

 源内の最期については、実は諸説あると言われている。書類上は死んだことにして逃げ延びた後、意次らによって匿われて天寿を全うしたという話もある。そんな説が令和の世にも囁かれていることこそ、この日の蔦重と須原屋の夢が一つ叶った形になるのかもしれない。そして、何かを成し遂げようとしていた源内にとっても。あの日の源内に、伝えられたらいいのにと思う。245年後の世の中で唯一無二のマルチクリエーターとして親しまれていることを。それくらい感情を揺さぶられた『べらぼう』第1章の完結。安田、渡辺、そして横浜が見せてくれた最高の名勝負に拍手をおくりたい。

【春ドラマ】2025年4月期ドラマ一覧

2025年4月期に放送される国内ドラマを総特集。今田美桜が主演を務める新たなNHK連続テレビ小説『あんぱん』をはじめ、阿部寛が主…

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる