『名探偵コナン 隻眼の残像』は何を押さえておけばいい? 長野県警&重要要素を徹底解説

諸伏高明の壮絶な過去
※以降『名探偵コナン』本編にまつわる重要なネタバレが含まれます。
大和の怪我や由衣の凄まじい行動力など長野組はいろいろ“濃い”が、おそらく最もキャラクターとして濃いのは諸伏高明かもしれない。名は「たかあき」あだ名は音読みで「コウメイ」の彼は大和と小学生以来の幼なじみで、上原とも旧知の仲である。

東都大学法学部を主席で卒業(小五郎の妻・妃英理も同大学出身)、それにもかかわらずキャリア試験を受けずにノンキャリアとして長野県警本部に所属。冷静で頭脳明晰であるが子供の頃から大和と何かと競う負けず嫌いな一面もある。そして『三国志』の引用を好み、セリフでもよく古語にちなんだ言葉を使う。そんなふうに言えば、ただの風変わりな刑事のように思えるが、普段から涼しい顔をしているにも関わらず、誰よりも壮絶な過去を持っているのだ。
なぜ、彼がノンキャリで長野県警にやってきたのか。彼は中学生の時、学校行事で家を留守にしている間に何者かによって両親が殺害される。遺体第一発見者である彼は、事件発生時に家にいた小さな弟が隠れているのを見つけた。その弟こそ、降谷零の幼なじみであり、「警察学校編」で彼とともに警察官を目指し、のちに公安所属となって黒の組織に「スコッチ」の名で潜入していた諸伏景光なのだ。
両親が殺された後、景光は失声症になってしまい東京の親戚に引き取られることになった。そこで兄弟は離れて暮らすことになり、景光は東京で降谷に出会う。失声症だった彼は降谷との交流で明るくなり、言葉も話すようになった。一方、表情の変化が乏しく静かな印象の高明。そんな彼の近くにずっといたのが、大和なのである。
景光が警官を目指した理由が「両親を殺害した犯人を見つけること」であることは「警察学校編」で明かされた(作中で明示されていないものの、兄の高明も同じ理由で警察官になっていた可能性はある)。のちに「警察学校編」で両親殺害の犯人を景光が見つけ逮捕するに至ったが、景光は公安になった時に「警察をやめて別の仕事に就いた」と高明に報告していた。そして暫くして黒の組織に潜入中、正体がバレてしまい、自分の胸元を撃って死んでしまう。それは胸元にあった携帯、そしてその中にある高明や降谷など大事な人の情報を渡さないためだった。その携帯を、降谷は同期の伊達航経由で高明に渡している。その携帯に血痕と弾痕があったことから、高明は連絡のつかなくなった弟が潜入先で殉職したことを知るのであった。
両親に続いて弟まで亡くしてしまった彼だが、なんと初恋の人……小学生時代の元同級生であり小説家の小橋葵も亡くしているのだ(『赤い壁』シリーズ参照)。子供の頃の高明をモデルにした本『2年A組の孔明君!』の作者である彼女は、イラストレーターと結婚するものちに心臓発作を起こして他界する。一番辛い事実は、そんな彼女の遺体の第一発見者がまたしても高明であることだ。大事な人を失い続けてきた彼。だからこそ、大和が雪崩に巻き込まれた事故においては上司命令を無視してまで単独で行動し、強引に事件を解決した。それが原因で所轄に異動させられたが、優秀なため自力で再び長野県警本部に復帰したのだ。普段は冷静な彼だが、大切な人が関わると急に周りが見えなくなって、危ない行動をとることもしばしば。『隻眼の残像』でも、そんな高明が無茶をしていそうな場面がすでに予告映像に映されている。命を狙われるのは大和だが、そんな彼を守るために高明は身を挺して危険な目に遭うのだろう。
公安の立場と黒田兵衛

最後に、公安との関係性にも触れておきたい。『隻眼の残像』では降谷と部下の風見裕也が登場することが明らかになっている。彼らと言えば劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』で小五郎を犯人に仕立てるなど、公安警察として冷酷な手口を使う様子が印象的だった。同作はそういった公安の闇にも迫る作品だったが、本作でも降谷が予告で「need not to know(知る必要がないこと)」と言及しており、小五郎の同僚が追っていた雪崩事故、あるいはその同僚自身に起きた事件が公安絡みのものなのかもしれない。
もうひとり、本作には重要な人物が登場する。警視庁捜査一課の管理官である黒田兵衛だ。彼は過去に大きな事故に遭い、10年近く意識不明だった過去を持っている。その際に顔に火傷を負い、右目を失った。今の彼の右目は義眼であり、そういった事故の経験がなんとなく大和に重なる部分も。そのせいでもう少し若い頃に生じるはずだった地方警察への出向が遅れ、初登場時には長野県警捜査一課長としてコナンたちと会っている。つまり、もともと大和たちの直属の上司だったのだ。

まだ謎多き人物ではあるが、実は彼は降谷の所属する公安のトップ「裏理事官」であり、彼が“バーボン”として組織に潜入していることを把握している。さらに、警視庁移動後に安室透が降谷であることに気づいた高明とも連絡は取っている。しかし、その内容はいまだに明かされていない。『隻眼の残像』で登場する黒田は、雪崩事故の当時長野県警に配属されていた身として、そして公安とのつながりとしても注目しておきたい人物だ。
『名探偵コナン 隻眼の残像』の公開は4月18日から。今年はいったい何が破壊され、何が明かされるのか。劇場版ならではの見どころに期待が募るばかりである。
■公開情報
劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』
4月18日(金)全国東宝系にて公開
キャスト:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、高田裕司、速水奨、小清水亜美ほか
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:重原克也
脚本:櫻井武晴
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
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公式サイト:http://www.conan-movie.jp





















