『あんぱん』「朝田パン」開店の裏で再会する母子 松嶋菜々子が沈黙の中に込めた想いとは

『あんぱん』「朝田パン」開店と再会する母子

 草吉(阿部サダヲ)の手でようやく「朝田パン」が開店したNHK連続テレビ小説『あんぱん』第9話。のぶ(永瀬ゆずな)や羽多子(江口のりこ)も懸命に店を盛り立て、少しずつ町にパンの香りが広がり始めた。悲しみの渦中にあった朝田家に、ようやく光が差し込みかけたその矢先、嵩(木村優来)のもとに、母・登美子(松嶋菜々子)から一通の葉書が届く。

 釜次(吉田鋼太郎)に疎まれながらも、草吉が「朝田パン」の開店にこぎつけた。草吉が作ったあんぱんは人を笑顔にする力を持っている。それは悲しみに暮れたのぶと羽多子ら、朝田家の人間にとってはかけがえのない希望の味だった。特に母・羽多子にとっては、かつて夫と共に見た夢の残り香のようなものであり、頑なだった心の扉を、草吉のあんぱんは少しずつ溶かしていった。のぶもまた、幼いながらに草吉の作るあんぱんを頬張るたび、口元をほころばせ、ふとした瞬間に父の面影を重ねていた。

 だが、草吉の挑戦は始まったばかりだ。釜次は相変わらず冷ややかな視線を向け、町の住人たちも、まだ“よそ者”に心を許してはいない。けれど草吉は信じていた。笑顔はパンでつくれる。そして、パンは人の心を変えられる――そう信じて、「朝田パン」の暖簾を掲げるのだった。

 その頃、嵩のもとには、登美子から「用事が長引いている」という短い文面の葉書が届いた。たとえ、それが喜ばしい内容ではなかったとしても、母親からの言葉は嵩にとっては、胸の奥でじんわりと温かくなるような、ほっとする気持ちを呼び起こすものだった。一方で千尋(平山正剛)は高熱を出し、寝込んでしまう。嵩は「母さんに会いたいか」と問いかけると、千尋はかすれた声で絞り出すかのように「カアちゃまに会いたいき」と答える。千尋が母親のことを覚えていたことをのぶに明かした嵩。「会いに行って連れてくりゃあええのに」――それを聞いたのぶの答えはいかにものぶらしいまっすぐなものだった。

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