10年以上続くショートアニメ『ポンコツクエスト』 松本慶祐監督が語る“変化”と“今後”

RPGのようなファンタジーの世界で、魔王に仕えるポンコツな魔物たちの日常を描いたコメディショートアニメ『ポンコツクエスト〜魔王と派遣の魔物たち〜』は2013年に始まり、すでに10年以上つづく長期シリーズ。緩い雰囲気でテンポよいユニークな会話劇を展開するその魅力は、10年経った今も変わらない魅力を放っている。YouTubeで配信開始した本シリーズは登録者数30万人を突破し、シリーズ累計再生回数は約1.5億回に到達。2024年4月から、最新シリーズ・シーズン8の放送がBS日テレでスタートした。
そんな本作は、アニメーション作家の松本慶祐がほぼ1人で制作し続けている。RPGの魔物たちを派遣社員になぞらえ、その重労働の日常をおもしろおかしく切り取った本作で、松本監督は大部分のキャラクターの声も自らあてている。究極の個人制作を貫いている松本監督に、同作シーズン8のBlu-ray発売を記念して、見どころと創作の秘密について話を聞いた。
10年以上続く、個人制作アニメーション
――『ポンコツクエスト』は10年以上続く長期シリーズとなっています。制作開始した2013年に、ここまで長く続くことになると想像されていましたか?
松本慶祐(以下、松本):いえ全然。せいぜい2、3年くらいで、何とかBlu-rayが出せれば成功かなくらいのイメージでした。こんなに長く続いていることに自分でもビックリしていますし、本当に幸運だと思います。
――初期の頃と比べて、制作に対する姿勢などに変化はあったのでしょうか。
松本:初期と比べて表現できることの幅が広がっていると思います。以前だったら、これをアニメーションでつくるのは大変だからやめとこうとなっていたものも、今は頑張ってやってみようと思うようになりましたし。制作はいまだに1人でやってますので、予算とかじゃなく、経験によるスキル向上が大きいですね。例えば、シーズン8に、無人島に漂流するエピソード(第九十三章『漂着』)があるんですけど、昔なら海は止め絵の背景にしていたところを、今回は海を動かしてみました。あと、ドット絵で動くゲーム画面なんかも作ってみたり、動きの面でも自由度が広がってきてるなって実感はあります。

――松本監督は個人で作ることにこだわりがあるのでしょうか?
松本:背景を一部手伝ってもらったり、編集で協力してもらうことはたまにあるんですけど、できれば1人で作りたいですね。制作ペースを上げたいと思う気持ち、1人でこだわりたいという気持ちが自分の中でせめぎ合っています。
セリフのテンポは特にこだわる
――本作の魅力は、やはりユーモアあふれる会話劇だと思います。脚本はいつもどのように作っているのですか?
松本:まず大きなテーマと題材を決めます。例えば、スマホゲームを題材にしようと決めて、その題材で面白いギャグや大喜利ネタなどを列挙して、話の流れをおおまかに決めます。大きな枠組みをまず決めて、そこに細かいギャグを嵌めていく感じですね。収録する時にも台詞は結構変えています。声で台詞をしゃべってみると、冗長な部分が出てきて、そういう台詞を切ったり、あるいは突っ込みをもうちょっと足してみることもあります。
――映像と音声、どちらを先に作っているのですか?
松本:まず音声の収録をします。先に絵を作ってしまうとダメなんです。
――プレスコならではの会話のテンポ感を大事にするためですね。シーズン1の頃からこれは同じやり方をされてるのですか?
松本:はい、それは変わりないです。やっぱり台本の上ではテンポがつかめないこともありますから。実際に声にしてみるともっとテンポを詰めないといけないとこが出てくるんです。このアニメはストーリーよりもネタの方が大事なので、ネタを活かすためにも会話のテンポは考えます。
――監督はそのネタを普段、どうやって考えているのですか?
松本:ゲームを題材にしているので、僕の好きなゲームとか、最近ハマったゲームとかが多いですね。最近もハンバーガー屋を経営するスマホゲームにハマり、それが第九十五章「副業」に活かされました。

――今後、『ポンコツクエスト』に取り入れたいゲームのネタはありますか?
松本:オンラインRPGはまだあんまりネタにしていない気がします。レトロなゲームのネタが多いので、最新ゲームはまだあんまりやってないんですよね。3Dの表現ができるようになれば、もっと色々できるのかなと思います。あとはアナログのゲームもまだあまりやっていないので、そういうのもいいかもしれないですね。





















