『メダリスト』師匠と弟子の視点がある意義 花田十輝が描く成長譚が“映像化の最適解”に

『メダリスト』師匠と弟子の視点がある意義

 花田十輝の作品の魅力は、何より会話の描写にある。近年、アニメの視聴環境は大きく変化し、スマートフォンでの視聴や倍速再生が当たり前になっている。また、原作が存在する作品のアニメ化が多発する中で、原作からの改変に対して視聴者が慎重な目を向けるのは自然なことだ。しかし、それはときに過剰な批判となることもある。実際には、漫画、アニメ、小説、それぞれの媒体には、その特性に合わせた言葉の紡ぎ方があるはずだ。アニメならではの表現方法があり、それに合わせたセリフの調整は必要不可欠なのである。

 『メダリスト』では、そんなセリフの調整が実に印象的な場面がある。原作での「わたしはスケートで勝ち負けをやりたいんだ。選手としてメダリストになりたいから」というセリフが、アニメでは「わたしはスケートで勝負したい。選手としてメダリストになりたい」へと変わる。実際に口に出して読んでみてほしい。アニメーションという表現方法において、いのりの決意をより鮮やかに、そしてテンポよく伝える言葉としてこのセリフが選ばれたことが、声に出した瞬間に納得できるはずだ。

 花田十輝が脚本を手掛ける『メダリスト』の魅力は、作品を形作る一つひとつの要素の響き合いにある。原作のある作品において、セリフの変更は常に慎重を要する作業だ。しかし『メダリスト』では、そのどれもが控えめでありながら、映像と見事に調和し、観る者の心を確かに揺さぶっている。花田十輝の描くアニメ版『メダリスト』は、氷上で輝く光のように、“映像としての正解”をそっと照らし出してくれるのだ。

■放送情報
『メダリスト』
テレビ朝日系“NUMAnimation”枠にて、毎週土曜25:30~放送
各配信プラットフォームにて配信中
キャスト:春瀬なつみ(結束いのり役)、大塚剛央(明浦路司役)、市ノ瀬加那(狼嵜光役)、内田雄馬(夜鷹純役)、小市眞琴(鴗鳥理凰役)、坂泰斗(鴗鳥慎一郎役)、木野日菜(三家田涼佳役)、戸田めぐみ(那智鞠緒役)、小岩井ことり(大和絵馬役)、三宅貴大(蛇崩遊大役)、伊藤彩沙(鹿本すず役)、加藤英美里(高峰瞳役)
原作:つるまいかだ(講談社『アフタヌーン』連載)
監督:山本靖貴
シリーズ構成・脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:亀山千夏
総作画監督:亀山千夏、伊藤陽祐
フィギュアスケート振付:鈴木明子
フィギュアスケート監督・3DCGディレクター:こうじ
3DCGビジュアルディレクター:戸田貴之
3DCGアニメーションスーパーバイザー:堀正太郎
3DCGプロデューサー:飯島哲
色彩設計:山上愛子
美術監督:中尾陽子
美術設定:比留間崇、小野寺里恵
撮影監督:米屋真一
編集:長坂智樹
音楽:林ゆうき
音響監督:今泉雄一
音響効果:小山健二
アニメーションプロデューサー:神戸幸輝
アニメーション制作:ENGI
©︎つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会
公式サイト:https://medalist-pr.com
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/medalist_PR

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