MCUファンも脱帽 『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が傑作なワケ

『キャプテン・アメリカ:BNW』が傑作なワケ

サディアス・ロスの物語として

 ロスは『インクレディブル・ハルク』の頃から嫌なやつとして時折シリーズに登場してきた。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではサムやスティーブと対立関係にあったことも記憶に新しい。基本的に独善的で冷血であり、ハルクになったブルース・バナー(エドワード・ノートン)を執拗に追撃したせいで、娘のベティ・ロス(リヴ・タイラー)とは絶縁状態だ。

 そんなロスが大統領に就任するところから本作の物語が始まるのだが、劇中で彼自身や側近が何度も「ロスは以前のような人間ではない」「ロスは変わった」と主張するのが印象的である。本当に人間は変われるのか、変わりたいと思う原動力は何なのか。その辺を踏まえたうえでロスのストーリーを見つめると、実は切なささえ感じてしまうのだ。

 このキャラクターにこれほどの哀愁があるのは、故ウィリアム・ハートから役を受け継いだハリソン・フォードの名演があってこそと言っても過言ではない。「サム・ウィルソンの物語であると同時に、サディアス・ロスの物語でもある」ということも、本作をエモーショナルに感じる重要なポイントだろう。

“あこがれ”になる

 本作は従来の『キャプテン・アメリカ』シリーズと同様、サスペンス要素も強い。劇中で起きていることや戦う人間のスケールがMCU作品の中では比較的かなり身近に感じられることもあって、その地に足のついた雰囲気を支持するファンも多い。今作も、間違いなくそういった重要なポイントは押さえつつ、“キャプテン・アメリカ”を継いだことに対する重責、あらゆる困難に立ち向かうサムの人間ドラマなど、本当に見どころが多すぎて大変な作品だ。

 このようなキャラクターの覚悟を感じさせられるようなマーベル作品は久しく、油断していたらラストシーンで涙腺が崩れてしまった。間違いなく今後のMCUに影響を与えると同時に、鑑賞後も“あこがれ”となったサム・ウィルソンのことをずっと考えてしまう、そんな傑作である。

■公開情報
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』
全国公開中
出演:アンソニー・マッキー、ダニー・ラミレス、リヴ・タイラー、ジャンカルロ・エスポジート、ハリソン・フォードほか
監督:ジュリアス・オナー
製作:ケヴィン・ファイギ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 MARVEL.
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-america-bnw

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