ビートルズへのオマージュも? 『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』特報を解説

『ファンタスティック4』特報映像を解説

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画およびジャンル映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします!

 今日は2月4日に解禁となったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)超大作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(邦題はこのように決まりました!)の特報映像解説です。

ファンタスティック4とは?

 ファンタスティック4(フォー)とはチーム名であり、“ファンタスティック”という映画の第4弾というわけではありません(笑)。まずこの予告編が2月4日にリリースされたのは、2月=Februaryの4日、つまりF4だからです。映画は今年の夏に公開予定(全米公開は7月25日)。

 “ファンタスティック・フォー”はコミックでは1961年にデビューしました。宇宙線を浴びた男女4人の仲間がスーパーパワーを身につけます。リーダーのリード・リチャーズは伸縮自在の身体となりMr.ファンタスティックと名乗ります。その妻となるスー・ストームは透明バリアを発生させたり、物事を不可視状態にする力を身に付けます。スーの弟ジョニー・ストームは全身を炎の状態にして空を飛ぶヒューマン・トーチ(たいまつ人間の意味)。そしてリードたちの親友ベン・グリムは肉体が岩石のようになり、怪力超人ザ・シングに。その力を人々のために使うことを誓った4人はファンタスティック・フォー(素晴らしい4人組)と名乗り活躍します。

 マーベルの歴史においてこの作品は極めて重要な意味を持ちます。というのも、ファンタスティック・フォーの大成功がマーベル・コミックスの躍進のきっかけだったからです。この後マーベルはハルク、マイティ・ソー、スパイダーマン、アイアンマン、アベンジャーズ、X-MENなどを発表していきます。ファンタスティック・フォーが人気を博した理由はいくつかありますが、ヒーローものに等身大の人間ドラマを持ち込んだからと言われています。超人となった4人は夫婦であり、姉弟であり、親友同士なのです。要は“家族”なのです。だから内輪もめや夫婦ゲンカもする。スーパーヒーローにこうした人間臭さを絡めたことが斬新でした。

 また、メンバー4人が匿名のヒーローではなく、世間が皆その正体を知っている(というかそもそも隠していない)点も面白い。ヒーローをある種、セレブ的に描いているわけです。さらにこのコミックから多くのヒーローやヴィランがデビューしました。ブラックパンサーはもともとファンタスティック・フォーのコミックが初登場ですし、次のアベンジャーズ映画(『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』)でロバート・ダウニー・Jr.が演じることが話題の、マーベルが誇るスーパーヴィラン“ドクター・ドゥーム”もここから生まれました。

 とここまで書いて、「じゃあなんで今までMCUに登場しなかったの?」あるいは「え? 昔、『ファンタスティック・フォー』という映画があったじゃん」と思う方もいるでしょう。実はMCUが始まる以前に本作の映画化権は20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)が持っていました。したがって、20世紀フォックス版の『ファンタスティック・フォー』映画が3作作られました。『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(2005年)、『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』(2007年)、『ファンタスティック・フォー』(2015年)の3作品です。2005年版、2007年版は正編・続編。2015年版はリブート版です。2005年版・2007年版でヒューマン・トーチを演じていたのが、後にMCUでキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースを演じるクリス・エヴァンスでした。というわけで、MCUとしてはファンタスティック・フォーの映画化に手を出せませんでしたが、20世紀フォックスがマーベルの親会社であるディズニーに買収され、映画化の権利がマーベルに戻ります。これによりMCUが晴れてファンタスティック・フォーの映画を作ることが可能になりました。手始めに『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)において別バースのMr.ファンタスティック(演じるのはジョン・クラシンスキー)が登場。さらに『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)でクリス・エヴァンス版ヒューマン・トーチがいじられ役で出てきます。こうした前振りを経て、ついにファンタスティック・フォーの映画がやってくる。それが『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』というわけです。

特報映像解禁自体がイベントになった

 さて、今回の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の特報映像リリース。これ自体がイベントになっていました。というのも、SNSなどで、2月4日の午前7時(アメリカ東部時間、日本だと2月4日の21時)に特報映像をリリースすることが匂わされました。そしてその時間にマーベル公式のXにアクセスすると、フューチャー・ファウンデーション(コミックに出てくる、リードが作った財団)による、アラバマ州ハンツビルの宇宙史博物館からの中継という触れ込みで、ここに展示されているロケットなどが映し出されます。そこにあと1時間で特報映像のローンチ、というカウントダウン表示が被る。つまり特報映像の解禁をロケット発射に見立てているわけです。そして待つこと60分、博物館内のホールからのライブ中継に画面が切り替わり、そこには大勢のファンが駆けつけています。そしてここにリード役のペドロ・パスカル、スー役のヴァネッサ・カービー、ジョニー役のジョセフ・クイン、ベン役のエボン・モス=バクラックが現れミニトーク。そして会場内中央に設置された発射ボタンを4人で押すと、それが合図となって特報映像がついに解禁! たかが(とあえて言います笑)特報映像の解禁にこれだけの凝ったイベントを仕込むとは。それだけマーベルの本作にかける意気込みがわかりますね!

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