小林虎之介、下積み生活で唯一の挫折とは デビューからの足跡を辿る1万字インタビュー

期待されることが怖いなって思う弱い自分もいます

――取材前にこれまでの小林さんの出演作を観てきましたが、『警視庁強行犯係 樋口顕』(テレビ東京系)とかまだ活動して間もない頃なのに、結構台詞がある役で驚きました。
小林:『警視庁強行犯係 樋口顕』は、僕の初めてのドラマでした。あれはオーディションでゾーンに入ったんですよ(笑)。たまにゾーンに入るときがあって、それがオーディションで来たので、決まってすごくうれしかったんですけど、地力がないから現場でゾーンに入らない。とりあえず一生懸命台詞言って、監督に「こう見えたらいいんですよね」って一丁前に言っちゃったりして、本当にバカだったなと思いますけど(笑)。
――その一方で、『駐在刑事 Season3』(テレビ東京系)だったり『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)だったり、いわゆる役名のない役もあります。こういう役のとき、どんな気持ちで現場に臨んでいましたか?
小林:悔しい気持ちももちろんありました。でも、それ以上にこれが次の現場につながればという思いで必死でした。正直、たった一言の台詞で注目を浴びることなんて、よっぽど有名な俳優さんじゃない限り難しいと思うんんですよ。それでも、もらえたたった一言の台詞で何かが変わることに希望を持って、一生懸命お芝居をしていました。当時は事務所にお芝居系のオーディションってそんなに多くなくて。現状を変えたくても、まずそのチャンスを掴めない。だからどんな小さな役でも、現場に呼んでもらったら、プロデューサーさんに名前を覚えてもらいたくて、もう1回使いたいと思ってもらいたくて、とにかく元気良く頑張っていましたね。ADさんとかAPさんとか関係なく、というか正直どの人がどういう権力を持っているとか、当時の僕には全然わからなかったので、手当たり次第にペコペコいい顔していました(笑)。
――そんな現状を変えたのは、やっぱり『下剋上球児』ですか?
小林:もちろんです。その前からちょっとずつ波が来ている感じはあったんですけど、あそこまで大きく世間からの見られ方が変わるとは思っていなかった。『下剋上球児』は今でも僕の中で大きな作品です。
――『下剋上球児』が終わって間もない頃に一度取材をさせていただいたことがあって。そのときは「有名になっても“芸能人”になりたくない」とおっしゃっていました。その思いは今も変わりませんか?
小林:そこで今、すごく迷ってて(笑)。プライベートでは今でも芸能人をしようとはまったく思っていないですよ。なんなら普通の人でいたい。下積みの頃と変わらないように誠実に生活していますけど。でも表に出ると、やっぱり“見られる”って何も意識しないわけにはいかないなって。こういう取材もそうですけど、多少なりとも影響力がちょっとついてきている自覚はあるので、発言も気をつけないと迷惑のかかる人が出てきちゃうから。周囲から芸能人だと思われることに関しては今でも好きじゃないですけど、芸能人は芸能人なので、言動とかちゃんとするべきかなとか、最近は考えるようになりました。
――『下剋上球児』の頃のインスタライブとか、ちょっとドキドキしていましたよ、この人自由だなって(笑)。
小林:当時はあんまり気にしてなかったですね(笑)。ただ、基本的にはそんなに作らずにいたいです。庶民的でいたいですね。
――期待されていることに対するプレッシャーは感じていますか?
小林:最近感じるようになりました。レッスンの講師の方ともお話ししていたんですけど、今までお仕事を受けるときにあったのは、挑戦と責任だったんですよ。でも最近はありがたいことに記事もいろいろと出していただいて、Filmarksとか読んでいても注目してると言ってくれる人が増えて、期待されている感じがどんどん伝わってきて。挑戦と責任に期待が加わるだけで全然違うんだっていうのを、今肌で感じています。新しい現場に入ったときも、『宙わたる教室』の評価があるから、「これくらいはできるんでしょ」みたいに思われてるのかなって、意識しすぎかもしれないですけど、感じちゃって。でも、そんな毎回上手くできないし、怖いなって思う弱い自分がいます。
――正直ですね。
小林:そういうプレッシャーに目を背ける生き方もあると思うんです。ネットも見なければいいし。そうやっていこうかなって最近までギリギリ迷っていたんですけど。でも僕がこれまでご一緒してきてカッコいいと思った先輩は、(鈴木)亮平さんも窪田さんも吉沢亮さんも絶対に期待から目を背けずにやってきた。僕もその人たちみたいにカッコよくなりたいから、期待を背負ってお仕事に向き合っていこうって決めました。まあ、怖いですけど(笑)。
――みなさん主演として作品を背負ってきた人たちですからね。小林さんもそういうポジションに早く就きたいですか?
小林:できるならなりたいですけど、でも今はそれより先輩の下について学ぶことのほうに興味があります。もちろん『ひだまりが聴こえる』みたいに主演をやらせてもらうことで得るものもあるんですけど、下にいることで学べることのほうが今の自分には多いのかなって。ゆくゆくは亮平さんや窪田さんみたいになりたいと思っているので、その成長段階として今は学びを大事にしたいです。
“うまい役者”にはなりたくない

――余談ですけど、『ぐるっと関西おひるまえ』(NHK総合・関西)みたいな素の自分で出る場のときはわりと大人しい感じですよね。Instagram Liveではあんなに自由なのに(笑)。
小林:『ぐるっと関西おひるまえ』は緊張していたのもあります(笑)。あと役のイメージもあるので、変なこと言わないようにしようと気をつけていたら、オンエア観た人から「別人みたいだった」って言われてびっくりしました(笑)。
――お調子者っぽいのに、シャイっていう。たぶんキャーキャーされるのもあまり得意ではないような。
小林:得意ではないです(笑)。人前に出るのが得意ではないので、たぶんキャーとなってる場に出ていったらニヤニヤしちゃうというか、恥ずかしくてカッコよく振る舞えないんですよ。ありがたいことなんですけどね。そんなふうに高い熱量を持ってくださる方がいるから、作品を観てもらえるし、盛り上がるし。だから、応援してもらえることにはめちゃくちゃ感謝しています。
――小林さんのお人柄を読者に知ってもらうためにぜひ出したいエピソードがあって。コンビニにお酒を買いに行ったら年齢確認を求められて、身分証明書を持ってなかったから、Wikipediaで年確をクリアしたっていう(笑)。
小林:そうそう。お酒は買って帰りたいから、どうしようってなって。あのときはちょっと有名人になって得したなと思いました(笑)。
――お芝居だけじゃなく、そういう人柄含めて魅力的だなと思っています。
小林:周りからはよく子どもだって言われています(笑)。でも、僕がこれまで現場でお会いしてきて、尊敬する方ってみんな少年っぽさを持ってるんですよね。お芝居に対しては真面目だけど、普段はちょっと抜けてて愛されやすいっていう。だから僕も変に大人になるより、今のまま少年心を持って、正直に生きていったほうが周りも楽しいし僕も楽しいのかなって。少年心を忘れずにいたほうが、役にもスッと入っていきやすいですしね。なので、このスタイルを忘れず貫き通して、どこかでガツンとゲンコツを喰らったら改めようかなと思います(笑)。
――そんな小林さんが考える“いい役者”とは?
小林:僕が目指す“いい役者”は、簡単に言うと魅力的な人。お芝居の面で言えば、ずっと見ていたくなる、ずっと聞いていたくなる、その人の醸し出す雰囲気にずっとふれたくなる人が“いい役者”かなって。“うまい役者”と“いい役者”は別だと思っていて。“うまい役者”にはなりたくない。“うまい役者”のほうが外さない芝居をする確率は高いと思います。でも、確率は低くても、強烈に“いい芝居”をする役者もいて、僕はそういう役者になりたい。絶対に小手先で芝居をやらないように。ちゃんと役を生きられる役者でいたいです。
――では最後に。2025年はどんな年にしたいですか?
小林:ありがたいことにたくさんお話をいただいているので、その一つ一つを全力で頑張って、観ている人に「いいドラマだった」と言ってもらえる作品を作っていきたいです。あまり遠いことは考えず、とにかく目先のことを一生懸命頑張っていけたら。
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