ロサンゼルスの山火事でハリウッドに再び試練 北米興収も不調の連休

ロサンゼルスの山火事でハリウッドに再び試練

 映画興行の一寸先は闇だ。先々週、1月7日にカリフォルニア州ロサンゼルスで発生した山火事は、直後の北米興行には(ロサンゼルス現地でさえ)大きな影響を及ぼさなかったものの、長期的な影響が大きいことがだんだんとわかってきた。

 1月の第3月曜日は祝日の「キング牧師記念日」。映画業界にとっては連休の稼ぎ時だが、残念ながら今年は史上ワースト3の低水準となった。北米市場全体の週末興行収入は約9630万ドルで、これはコロナ禍の影響が甚大だった2021年、2022年に次ぐ数字。どうしたことか、悪いことは重なるものである。

 まずは週末3日間(1月17日~19日)のランキングをチェックしてみよう。『ライオン・キング:ムファサ』(以下、『ムファサ』)に競り勝ち、首位の座をつかんだのはコメディ映画『One of Them Days(原題)』。一時は首位に輝くと予想されていたモンスター映画『Wolf Man(原題)』は第3位での発進となった。

 それぞれの興収額はほんの僅差だ。『One of Them Days』が1160万ドル、『ライオン・キング:ムファサ』が1153万ドル、『Wolf Man』が1055万ドル。祝日の月曜日を含む4日間では順位が入れ替わり、『ムファサ』が1550万ドル、『One of Them Days』が1400万ドル、『Wolf Man』が1200万ドルと予測されている。

『ライオン・キング:ムファサ』© 2024 Disney Enterprises Inc. All Rights Reserved.

 公開直後こそ渋い滑り出しだった『ムファサ』は、公開5週目にして北米興収2億ドルを突破、世界興収では6億ドルに迫り、めでたく劇場公開で黒字化を迎えられそうだ。『モアナと伝説の海2』も世界興収10億ドルを超え(もともと配信リリース予定だったことが今となっては信じられない)、ディズニーの復活ぶりには改めて舌を巻く。

 期待以上の成績をあげたのは、ソニー・ピクチャーズ製作『One of Them Days』だった。『NOPE/ノープ』(2022年)のキキ・パーマーと、グラミー賞に輝く歌姫SZA(本作で俳優業デビュー)主演のフィメール・バディ・コメディで、レストランで働くドルーとアーティスト志望のアリッサが、奪われた家賃を取り戻すべく、犯人であるアリッサの恋人を追いかける。

ONE OF THEM DAYS - Official Trailer (HD)

 黒人女性が主役のコメディ映画は、2017年製作『ガールズ・トリップ』以来なんと8年ぶり(!)。コロナ禍以降、「コメディ映画には客が入らない」というイメージがつき、多くの作品が配信リリースとなったが、ソニー・ピクチャーズはコメディの劇場公開にこだわってきた数少ないスタジオだ。

 それゆえ、失敗しないための戦略には長けている。製作費1400万ドルと低予算なので、現在の興収規模でも黒字化は視野に入った。初日の客層は全体の約半分が黒人だったというから、ターゲットにも刺さっている。Rotten Tomatoesでは批評家スコア97%・観客スコア92%、出口調査に基づくCinemaScoreでも「A-」と支持も上々ゆえ、口コミ効果にも期待できるだろう。大人向けコメディである以上、スマッシュヒットは難しいため、まずは上々の成績だ(それでも『ムファサ』に連休の王座を奪われたのはもったいないが)。

 むしろ、ポイントは今後の展開だろう。同じくソニー配給のヒットコメディ、ジェニファー・ローレンス主演『マディのおしごと 恋の手ほどき始めます』(2023年)と、シドニー・スウィーニー&グレン・パウエル主演『恋するプリテンダー』(2023年)にどこまで迫れるか。前者は北米興収5045万ドル、後者は8831万ドルである。

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