米大統領就任式の前に観るべき『アプレンティス』 ドナルド・トランプが“怪物”になるまで

米大統領就任式前に観たい『アプレンティス』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、小学生時代に学級委員長という名の小さな権力に翻弄されていた佐藤が『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』をプッシュします。

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

 アメリカにおけるサクセスストーリーの本質とは何か、そしてその栄光の陰でどれほどの代償が払われてきたのかーー。

 共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の勝利が確実となったのは、2024年11月6日米東部時間午前5時半(日本時間午後7時半)のこと(※1)。選挙人が過半数の270人必要なところ、計312人獲得したトランプ候補が政権に復帰するのは実に4年ぶり。そして、1月20日(現地時間)にはアメリカ大統領就任式が控えているという絶好のタイミング。トランプ本人が上映を阻止しようとしたほどのギリギリを攻めた本作は、第45代アメリカ合衆国大統領として知られるドナルド・トランプが伝説の弁護士に導かれて驚くべき変身を遂げ、トップへと成りあがるまでの道のりを描いた伝記映画。

 繊細で気弱だった若き日のドナルド・トランプ。その人生の転機は、「勝つための3つのルール」との出会い。不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前に追い込まれていた彼は、政財界の実力者が集う高級クラブで弁護士ロイ・コーンと運命的な出会いを果たす。手段を選ばずに勝利を追求する狡猾な男として知られるコーンは、トランプを気に入り、「勝つための3つのルール」を伝授する。その教えとは、常に攻め続け相手を圧倒すること(攻撃 攻撃 攻撃)、自分の過ちを認めず意見を貫くこと(非を認めない)、そして周囲が敗北と見なしてもそれを勝利へと転じること(決して負けを認めない)というものだった……。

 コーンの指導によって服装から生き方まで変貌を遂げたトランプは、次々と大事業を成功させていく。しかし、その成功はやがてコーンの想像を超え、トランプを“怪物”と呼ばれる存在へと変えていった。「勝つための3つのルール」は、トランプの野望を加速させただけでなく、彼を通じてアメリカ社会全体に大きな影響を与える原動力となったのだ。

 伝記映画としての完成度が評価されている本作だが、主演のセバスチャン・スタンによる功績が非常に大きいと感じた。『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー役で知られ、第74回ベルリン国際映画祭で最優秀主演俳優賞(銀熊賞)に輝いたスタンにトランプの“面影”がハッキリと見えるのだ。スタンは勝利への執着に取り憑かれた男の内面を、声や仕草、さらには体の細部に至るまで緻密に表現。その卓越した演技は、本作を単なる伝記映画以上の作品へと昇華させている。

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