『東京サラダボウル』松田龍平が放つ色気が凄まじい 『舟を編む』と重なる“言葉”を知る意義

それほどまでに有野木が正確性にこだわるのは、刑事を辞めるきっかけとなった3年前の事件が関係しているのだろう。「有木野が上麻布署内の不祥事を週刊誌にリークした」という噂を聞いた鴻田(奈緒)。ネットで見つかった疑惑の記事には、「上麻布警察署 取り調べ中に“意図的誤訳”」「上麻布署警察関係者と名乗る人物から匿名で、記録データの提供があった」と書かれていた。おそらく有木野はその不祥事で、誤訳の恐ろしさを目の当たりにしたと思われる。一方、鴻田もまた重い過去を抱えていそうだ。

キャンディ探しをきっかけに「こぼれカスヒーローズ」を結成した鴻田と有野木だが、今回は別々の事件を担当。だが、2つの事件は意外なところで繋がる。鴻田が取り調べしていたスリランカ人のアシャンに自転車のバッテリーを盗むように指示したのは、飯山係長(皆川猿時)や杓野巡査部長(中川大輔)、有木野が探していた多国籍窃盗団のまとめ役・安藤(オクイシュージ)だったのだ。
安藤が元暴力団員とは知らず、1人で彼が潜居していた場所に乗り込んだ鴻田。摘発された窃盗団の一味から安藤の居場所を聞き出した有木野によって助け出されるも、あわや殺されるところだった。その中で印象的だったのは、安藤に襲われた時、鴻田の脳裏にフラッシュバックした血まみれのナイフ。もしかしたら、彼女はかつて外国人が関わる事件に巻き込まれた過去があるのかもしれない。それが、有木野も懸念する、前のめりで向こう見ずな行動に繋がっているのではないだろうか。

それにしても有木野が放つ色気のすごいこと。彼が職務を逸脱し、鮮やかに安藤を確保した瞬間、視聴者の胸に矢が刺さる音が聞こえてくるかのようだった。本人は他人と距離を置いているが、そのミステリアスな雰囲気が却って人を寄せ付ける。男性からも女性からもモテモテの有木野だが、張柏傑のバーで突然頬にキスしてきた謎の男・シウ(絃瀬聡一)は途轍もなく怪しげだ。
■放送情報
ドラマ10『東京サラダボウル』(全9回)
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
NHK BSP4Kにて、毎週火曜18:15〜19:00放送
再放送:NHK総合にて、毎週木曜24:35〜25:20放送
出演:奈緒、松田龍平、中村蒼、武田玲奈、中川大輔、絃瀬聡一、ノムラフッソ、関口メンディー、朝井大智、張翰、許莉廷、喬湲媛、Nguyen Truong Khang、阿部進之介、平原テツ、イモトアヤコ、皆川猿時、三上博史
原作:黒丸『東京サラダボウルー国際捜査事件簿―』
脚本:金沢知樹
音楽:王舟
メインテーマ曲:Balming Tiger
メインビジュアル・デザイン:大島依提亜
メインビジュアル・スチール撮影:垂水佳菜
演出:津田温子(NHKエンタープライズ)、川井隼人、水元泰嗣
制作統括:家冨未央(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
プロデューサー:中川聡子
写真提供=NHK






















