『MR.JIMMY ミスター・ジミー』“再現芸術”の追求が思い出させてくれる“ロック”の衝動

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、中学時代からハードロックに傾倒していた徳田(1996年生まれ)が『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』をプッシュします。
『MR.JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』

『MR. JIMMY ミスター・ジミー』は、ジミー桜井の生涯を追ったドキュメンタリー映画だ。ジミー桜井はLED ZEPPELINのギタリスト、ジミー・ペイジのコピー演奏を生業とするギタリストである。あまりの再現度の高さにペイジ本人にもその名が知れ、ペイジがお忍びで来日した際には彼の演奏を賞賛、本人「公認」のコピーギタリストとなるのだった。
このように本作で描かれるのは「LED ZEPPELINの『再現』を目指す男」のドキュメンタリーである。したがって主題となる問いは「LED ZEPPELINのサウンドとは何か」であると同時に、あるいはそれ以上に「『再現』を追求するとはどういうことか」ということでもある。
ジミー桜井はペイジとの邂逅の後やがて渡米し、アメリカ本土でのトリビュートバンドに参加するようになる。しかしそこで描かれるのは、日本から「逆輸入」されたツェッペリン狂の栄光というよりはむしろ「挫折」であった。

ジミー桜井はその演奏力の高さを評価され一時期はトリビュートバンドとして活躍するも、LED ZEPPELINの「再現」へのあまりの固執ぶりから、メンバーから距離を置かれるようになる。たとえ同じ曲であってもあらゆるバージョン・年代のアレンジ・サウンドを熟知していたジミー桜井は、自身と同程度のLED ZEPPELINへの理解をメンバーにも強要するようになり、やがてメンバー間の温度差がバンドを崩壊させてしまうのだった。
たしかに彼の「再現」へのこだわりは、常軌を逸している。

本編序盤で映し出されるのは、ジミー桜井が「衣装」を発注する場面だ。ここでは、ペイジの肩のラインに生じたわずかなシワを再現するにはどうすればいいかについて悩み抜くジミー桜井が登場する。あるいは後半、ジャケットの縫い目の修正をcm単位で指示したり、ギターのピックガードやピックアップカバーをペイジのものに近づけるべくオーダーメイドするなど、サウンドメイク以外の演出への狂気的なこだわりに、観客は面食らうことだろう。





















