2024年の年間ベスト企画
児玉美月の「2024年 年間ベスト映画TOP10」 映画にとってなにより尊ぶべき“カタルシス”
『コット、はじまりの夏』、『ミツバチと私』はそれぞれ親戚夫婦のもとでひと夏を過ごす少女と非規範的なジェンダーを生きる子供の映画。2024年はこの二作品に加えて、母親を亡くした少女が行方知らずだった父親と再会する『SCRAPPER/スクラッパー』や幼少期のトラウマが原因で社会に適合できない子供を扱う『システム・クラッシャー』など、優れた子供映画が豊富な年だったことが印象深い。
2024年のダークホースは、『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』。花屋を開業する夢を実現させようとしているブレイク・ライヴリー演じる主人公が、外科医と運命的な出会いを果たしながら、初恋の相手とも再会する。三角関係の王道ロマコメが展開されるかと思いきや、意外なテーマが深化されていく。その意味では、『パスト ライブス』もいわゆる三角関係ものでありながらアジア系移民の経験が反映され、こうした既存の枠組みで新たな視点を見せてくれる作品が新鮮に感じた。
年明けには、早々にペドロ・アルモドバル監督による新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が公開される。アルモドバルは75歳に至って、死と病に真正面から向き合う成熟した作品を世に送り出す。ここにきてさらなる傑作を更新したイーストウッドは現在94歳だが、そう考えると着実にキャリアを積み上げ、今年『メイ・ディセンバー』を撮ったトッド・ヘインズがまだ63歳なのが随分若く感じられる。まだまだ彼らの今後の作品にも、期待していきたい。