『海に眠るダイヤモンド』斎藤工の笑顔が忘れられない “物語”ではなくなった端島の歴史

だが、それは一平たちが「死ぬ思いで掘ってきた血が通った道」を海水で埋めるということ。海水に沈めば、再発掘はできない。端島の息の根を止める。その作業をするのが、誰よりも端島の未来を思って奔走してきた鉄平が担うという残酷さに、胸が張り裂けそうになった。そして、海水で沈む坑内には一酸化炭素中毒で倒れる進平の姿が……。

「端島ならなんとかなる」とリナを元気づけてきた進平の笑顔が脳内から離れない。彼女が進平の妻として、誠の母として、「荒木リナ」として生きるためには、どうしても端島という場所が必要だった。だから、不安そうにしている彼女を「荒木リナ」と呼んで励ましていたのだろう。まだまだ「荒木リナ」でいさせてあげるから、と。だから誰よりも必死になって密閉作業にあたっていたのだろう。
しかし一酸化炭素中毒によって見えた幻覚が、亡き妻の栄子(佐藤めぐみ)というのも辛すぎた。栄子はいない。栄子を求めて海を眺めていたころの自分とは違うのだ。今はリナと誠がいる。3人で幸せになろうと約束した。そう正気を取り戻したのも束の間、膝から崩れ落ちる進平を見ていられなかった。進平が強いからこそ、幻覚に誘われるままにならなかったのだ。リナたちのもとに足が進んでくれないことを、どれだけ悔しく感じただろうか。もちろん、このドラマはフィクションだとはわかっている。だが、きっと進平たちのように、端島でみんなで幸せになろうと誓って、キラキラと働いていた人たちがいたはずだと思うと、より一層込み上げてくるものがある。

端島の歴史を紐解くと、閉山するのは1974年1月のこと。そこから4月には島民が一斉退去し、無人島になるという。この火災からおよそ10年。鉄平に何があったのか。彼はどこに行ってしまったのか。朝子に何も告げずに姿を消す理由が、きっとあの切り取られたノートに書かれているのだろう。
まだ、どうして鉄平のノートがいづみ(宮本信子)のもとに渡ったのかも、なぜ破られたのかも、謎は解けていない。しかし、鉄平に代わって50年越しにコスモスの種を植えてくれた玲央(神木隆之介/1人2役)ならば、諦めることなくきっといづみの願いを叶えてくれることを信じている。
■放送情報
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、中嶋朋子、山本未來、さだまさし、國村隼、土屋太鳳、沢村一樹、宮本信子、尾美としのり、美保純、酒向芳、宮崎吐夢、内藤秀一郎、西垣匠、豆原一成(JO1)、片岡凜
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介
プロデュース :新井順子、松本明子
スーパーバイザー:那須田淳、岡崎吉弘
音楽:佐藤直紀
編成:中井芳彦、後藤大希
製作:TBSスパークル、TBS
制作協力:NBC長崎放送
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/umininemuru_diamond_tbs/
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