『おむすび』演出陣も鳥肌が立った緒形直人の名演 100人近くが参加した防災訓練の裏側も

『おむすび』演出陣も鳥肌の緒形直人の名演

 NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。

 第10週では、さくら通り商店街で「夏休みこども防災訓練」を開催することになる。「豚汁と混ぜご飯はもう飽きた」との意見が上がっていることから、栄養専門学校に通う結を“炊き出し隊長”に任命。結は友人・沙智(山本舞香)らの協力を得ながら献立を作成し、 訓練当日には笑顔で“わかめおむすび”と“サバツナけんちん汁”を振る舞った。

 同週の演出を担当した小野見知は「助監督チームも含めて取材を重ね、神戸市の消防局や灘消防団の方など、いろいろな方に、子ども向けの防災訓練に関してお話を伺いました。その上で、災害の現場ではどのような栄養素が不足して、非常時でも食材が手に入りやすく、調理しやすいメニューは何なのか。食や栄養の指導で入っていただいている専門家にもご相談をして、最終的にわかめで食物繊維、サバ缶・ツナ缶でたんぱく質、カルシウムを摂る、といったところに辿りつきました」とメニュー決定の経緯を語る。

 防災訓練のロケ地には、実際に同様の訓練が行われている場所を使用。エキストラとして地元の親子や消防団員、延べ100人近くに協力を依頼し、「ふだん行っているようなことをロケでもやっていただきました」とリアルを追求した。

 さらに、若林(新納慎也)と菜摘(田畑志真)が読み聞かせをした紙芝居も、実際に子どもたちへの読み聞かせで使われているものを借用。演じる新納は神戸市出身で、小野は「新納さんご自身に“あの日”に対する思い入れがあることから『おむすび』にご出演いただいたこともあり、ぜひこの紙芝居を読んでもらいたい、と。加えて、新納さんの舞台を私自身ずっと拝見してきましたので、『ぜひとも客席のお子さんや大人たちの心を惹き込んでください』とお願いしました」と回顧。

 「撮影日はとても暑かったのですが、お子さんたちも誰一人ふざけたり茶化したりすることなく、真剣に紙芝居を聞いてくれて。それはきっと、新納さんと田畑さんのお芝居の魅力によるものなんだろうなと感動しました」と賛辞を贈った。

 第50話の終盤には、美佐江(キムラ緑子)の誘いをきっかけに孝雄(緒形直人)が会場を訪れ、結が差し出したおむすびを口にする。小野は「現場で見ていて胸が苦しくなりましたし、鳥肌が立ってしまったというか。生きていくことを彼自身が飲み込む瞬間であり、『いつ死んでもいい』『死ねるなら死にたい』と思いながら生きてきた方が、娘に対して『ごめんね』と思いながらおむすびを一口食べるようにも見えて。現場ではジーンとすると同時に、良い意味でゾワッと来るものがありました」と打ち明ける。

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