『ザ・トラベルナース』が問いかける“ハラスメント”の先 森田望智の強烈な言葉も

『ザ・トラベルナース』が問うハラスメント

「若い頃は、アホな上司にへつらって、怒鳴られて、頭はたかれて、“なにくそ!”と思うて頑張ったもんじゃ」
「わしの人生、全部否定せんでくれや」

 五味が当時の上司から受けてきたことはきっと現代の価値観からしたら“パワハラ”だろう。自分がされてきたことが“当たり前”と感じていたから、同じようにした。彼にとってはそれだけのことだったのに、自分を慕ってくれる人がどんどんいなくなってしまい、「自分が否定された」ように感じてしまったのかもしれない。

 本作のようなヒューマンドラマは、さまざまな世代の、まさに多様な価値観を浮き彫りにする。新人の柚子、中堅の吉子、彼女たちとは職種は違うが、社会人ベテランの五味。彼らには彼らなりの考え方がある。そしてそれは、ドラマを観ている私たちにも言えること。本作は、日常生活では実感できないような、人それぞれの考え方をあたたかく、優しく、丁寧に教えてくれる。

 おもしろいのは、最終的に人の心に響く言葉というのは、若さや地位が関係ないということだ。柚子は横暴な五味にブチギレ、医師でもないのに五味に「1カ月もすれば死ぬ」と勝手に余命宣告してしまったのだが、五味はそれがあったからこそ「なんかスッキリした」と言った。柚子の言葉が、五味を現実と向き合わせたのだ。

 歩たちが受けたハラスメント研修では、「互いにリスペクトを」と言われていた。だが吉子は柚子の口調は厳しく、歩と静はケンカしているように軽口を叩きあう。それでも互いのことは認め合っているのだ。リスペクトの表現の仕方も人それぞれなのだろう。

■放送情報
『ザ・トラベルナース』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:岡田将生、中井貴一、山崎育三郎、森田望智、野呂佳代、池谷のぶえ、安達祐実、浅田美代子、寺島しのぶ
脚本:中園ミホ、香坂隆史
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:峰島あゆみ(テレビ朝日)、秋山貴人(テレビ朝日)、大垣一穂(ザ・ワークス)、山田勇人(ザ・ワークス)、角田正子(ザ・ワークス)
演出:金井紘、片山修、山田勇人
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/the_travelnurse_2024/

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