『おむすび』で“ギャル度”上昇中? 橋本環奈のコメディエンヌとしての実力
9月30日の放送開始から早くも1カ月を迎えようとしているNHK連続テレビ小説『おむすび』。第1週から第3週までは、ギャル嫌いな主人公の結(橋本環奈)が博多ギャル連合“ハギャレン”に勧誘され、迷惑しつつも困っているメンバーを見捨てられず助けているうちに、少しずつ友情が芽生え始めていく過程が描かれた。
そして第4週に突入し、ついに結がギャルを嫌悪するきっかけを作った姉・歩(仲里依紗)が本格登場。かつては仲の良い姉妹だった2人の心が離れてしまった原因が明かされる。ここまでを振り返って思うのは、本作は橋本にとって俳優人生のひとつの集大成になるだろう、ということだ。
福岡のアイドル時代に撮影された1枚の写真から有名になった橋本。彼女がすごいのは、その偶像的イメージを早々に脱却したこと。そのまま清純派女優として生きる道もあったはずだが、橋本は映画『銀魂』でヒロインの神楽を演じ、白目で鼻をほじったり、マーライオンのように食べたものをもどしたりと、原作通りのぶっ飛んだキャラクターを体当たりで完全再現したのだ。以降、同作でメガホンを取った福田雄一監督作品の常連となり、彼のもとで橋下はコメディエンヌとしての才能を開花させていくことになる。
バラエティ番組やインスタライブなどを見ていても、橋本はサービス精神が旺盛で、よく笑い、よく呑むので、どこか豪快な人という印象がある。そんな橋本が主演、なおかつギャルが題材になるということで、今回の朝ドラはとびきり明るい作品になるのではと多くの人は予想していたのではないだろうか。たしかに初回の放送ではいきなり海に飛び込んだり、トマトを丸かじりしたりと天真爛漫なヒロイン像が打ち出されていたが、第2話、第3話と回を追うごとに結というキャラクターが内包する“翳り”も少しずつ見えてきた。
結は伝説のギャルだった姉の歩が散々家族に心配をかけてきたので、自分は地に足をつけた生き方でみんなを安心させてあげたいという気持ちが人一倍強い。だから常に人の顔色を伺って行動しているが、本当は言いたいことがあるのに敢えて抑え込んでいるのが分かる橋本の演技が印象的だ。橋本は前述した『銀魂』然り、主に実写化作品で見せる大胆な演技が取り沙汰されがちだが、『連続ドラマW インフルエンス』(WOWOW)や『春に散る』などでは内に秘めた繊細な感情表現が光っていた。それが朝ドラでより多くの人の目に触れ、日の目を浴びたことを嬉しく思う。
他方で“ハギャレン”のギャルたちをはじめ、周囲の個性豊かな登場人物に振り回される結のリアクションにはユーモアがあり、繊細さと大胆さのバランスが抜群。デビューから現在まで様々な作品に出演し、培ってきた全ての力を橋本は本作につぎ込んでいる印象だ。