『オクラ』あり得ない設定を成立させる作劇の妙 青木さやかが息子との関係に悩む刑事熱演

『オクラ』あり得ない設定成立させる作劇の妙

 それに加えて、緊張と弛緩のリズムが絶妙だ。過去の事件を現代から見れば、どうしてもタイムラグが発生する。リアルタイムで進行していない分、再捜査する側も緊張感をもって捜査を進めることは難しい。けれども、そこで無理にシリアスにしないところが良い。恒例のスイーツタイム、冗談めかした千寿の挙動やバレバレな演技は、過去と現在を隔てる時間をいやおうなく意識させる。

 その対比でシリアスな要素もある。千寿や祈里は、相棒や愛する人の死を背負っていて、各話のクライマックスでは降り積もった感情が悲しみや怒りとして表出する。この点で王道の刑事ドラマと言っていいのだが、そこに至る道のりが独特なのだ。

 蓬田に爆破テロを起こすように命じた人間や警察内部の黒幕の存在は、倫子(白石麻衣)の父で千寿の相棒だった結城(平山祐介)が死んだ事件にもつながっていると思われる。千寿が利己に秘密にしている「ファイル」やオクラのメンバーが集まった理由も、明らかになっていくはずだ。

 祈里を演じた青木さやかは、体当たりのアクションをはじめ、第3話の随所で存在感を放った。息子との関係に悩むシングルマザー、また夫を亡くした妻として、11年という時間の流れと葛藤が伝わってくるような魂の叫びだった。

■放送情報
『オクラ~迷宮入り事件捜査~』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:反町隆史、杉野遥亮、白石麻衣、前田旺志郎、有澤樟太郎、三浦獠太、青木さやか、橋本じゅん、宇梶剛士、平山祐介、中村俊介、観月ありさ
脚本:武藤将吾
音楽:林ゆうき
主題歌:Kroi「Jewel」(IRORI Records/PONYCANYON INC.)
演出:柳沢凌介ほか
プロデュース:足立遼太朗
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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