『オクラ』あり得ない設定を成立させる作劇の妙 青木さやかが息子との関係に悩む刑事熱演

『オクラ』あり得ない設定成立させる作劇の妙

 『オクラ~迷宮入り事件捜査~』(フジテレビ系)第3話が10月22日に放送された。 千寿(反町隆史)にねつ造の証拠を突き付けた利己(杉野遥亮)は「あなたの正義が本当に正しいのかどうか見極める」と言い、千寿への協力を承諾する。ただし、千寿が「自分の正義に背いたそのときは、容赦なく引き金を引く」と条件を付けた。

 未解決事件を捜査する共犯者、もといバディとなった二人が第3話で挑むのは11年前の爆破テロ。アメリカ国務長官の来日に合わせてコンサート会場で起きた爆発で、オクラの一員である祈里(青木さやか)の夫・圭吾(是近敦之)が殉職していた。千寿たちは、「2013年の東京シンフォニーホール爆破事件の犯人は『プロフェッサー』。秋葉原の電気街を探せ」とのタレコミを警視庁のサイトに送りつける。

 祈里にとって忘れることのできない事件である。例によって千寿の“千里眼”が発動し、再捜査が決定。千寿と利己、そして祈里は秋葉原へ向かった。犯人であるプロフェッサーの事件への関与を明らかにする過程と並行して描かれたのが、祈里と一人息子である文哉(川口和空)親子の関係だ。15歳の文哉はいじめで不登校になり、母親との関係も冷えきっていた。祈里はその理由が圭吾を亡くした11年前の事件にあると考えていた。

 犯人の目星はついていて、利己は宅配便を装って防専工科大学の元准教授である蓬田(古賀清)と接触。指紋を採取すると、警察に残された指紋と照合した。こうして犯人である確証を得た千住たちは取調室で蓬田と対面する。

 第3話では新たに千寿の協力者が明らかになった。スポーツバーの店長・阿澄(三浦獠太)は店の奥に専用機材をそろえ、鑑識の愁(観月ありさ)は証拠をねつ造していた。愁は千寿の元妻である。未解決事件の再捜査は、千寿と仲間たちの手で組織的に行われていた。

 ドラマで当たり前のように行われているせいで見過ごしそうになるが、証拠のねつ造はれっきとした違法行為である。いくら確証があるといって、正式な手続きを踏まなければ違法捜査となり、冤罪を生み出すことになりかねない。被疑者からすれば、いったん晴れた嫌疑が蒸し返されるので、重大な権利侵害といえる。

 という冷静に考えると作品の根幹にかかわる難点があるのだが、本作はフィクションの力で乗り越えている。お蔵入りした事件を扱い、捜査権を与えられたオクラの設定や、バーの秘密基地、堂々とねつ造に協力する元妻など、うまくユーモアをちりばめながら作品の世界観に取り込んでいる。

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