脚本家・根本ノンジの真骨頂は“超個性派キャラの調和” 『おむすび』は画期的な朝ドラに

脚本家・根本ノンジの作家性を紐解く

 現時点での『おむすび』の何より興味深いところは、異なる「青春」を一望できるということではないだろうか。第1週では書道部とギャルが描かれた。さらに第2週では、結が書道部で活動している最中、グラウンドで野球する野球部員たちの声が聞こえてくる。そして結たち書道部が野球部の応援に行き、書道一筋のようだった風見が「本当は野球部に入りたかったけれど、運動神経が壊滅的に悪い」という意外な一面を見せる。

 朝ドラにおいてヒロインの成長を示す1つの過程として描かれることが多い高校生パートは、短期間で過ぎていくため、ヒロインの周辺で巻き起こる出来事しか描けない。そのため、ギャルと書道部と野球部という、たとえ同じ学校内にいたとして決して交わりあうことがなさそうなコミュニティに所属する人々の「青春」を一望できる朝ドラというのは、実はものすごく画期的なのではないか。そしてその3点を繋いでいるのが他ならぬ「人の心と未来を結ぶ」ヒロイン・米田結であり、根本ノンジ脚本のマジックである。

 第3週目となり、 “憧れの風見先輩”が、野菜染めを前にさらなる意外な一面を見せたり、真面目な女子高生としての仮の姿とハギャレンのメンバーとしての変身姿をキュートに使い分ける理沙(田村芽実)が、ギャルの歴史の本を出すことを夢見ていることが明かされたりして、それぞれのコミュニティに属する人々の、枠にはまらない、とてつもなく魅力的な一面を垣間見ることができるようになった。

 もしかしたら私たちは、本作で描かれる「ギャル=不良」と決めつけて遠巻きに見ている人々のように、人のことをほんの一面だけみて、理解したつもりになっているだけなのかもしれない。『おむすび』はきっと、彼ら彼女らのさらなる底知れない魅力を教えてくれるはずだ。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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