小田和正の“夢と冒険”の幻のドキュメンタリー 『キャディ 青木功/小田和正』は必見!
CSホームドラマチャンネルでスペシャルドキュメンタリー番組『キャディ 青木功/小田和正~怒られて、励まされて、54ホール』が放送される。1994年にテレビ東京で放送されて以来、30年ぶりにテレビで放送される「幻のドキュメンタリー」である。
これは日本を代表するビッグアーティスト・小田和正が、ゴルフ界のレジェンド・青木功のキャディに挑戦した様子を記録したもの。しかも、遊びのゴルフではなく、全米シニアツアーの公式戦だからただごとではない。
雑誌の企画から嘘みたいな話が本当に実現したのが1993年10月。当時、小田は46歳。2年前の1991年に「ラブ・ストーリーは突然に」が250万枚以上の爆発的なヒットを記録したばかり。一方の青木は51歳。4年連続で日本ツアー賞金王、全米オープン準優勝、日本人初の米国PGAツアー優勝、世界四大ツアー優勝を達成するなど、輝かしい記録を持つゴルフ界のレジェンド中のレジェンドだ。
小田は交友のあった青木に「キャディを体験させてほしい」と提案。まさかのOKをもらって、アメリカ・ロサンゼルスのランチョ・パークで行われた全米シニアツアーの公式戦「ラルフス シニア クラシックス」のキャディを務めることになったという。ドキュメンタリーのナレーションを務めている小田は、自分の気持ちを次のように語っている。
「プロのゴルファーはいったいどんな景色を見ながら、どんな気持ちでゴルフをしているのか。その気持ちに少しでも近づけないか。そうだ、キャディをしてみたらどうだろう。本当のトーナメントならもっといい。外国での試合ならなおさらいい。それが青木さんなら言うことない。話はエスカレートしていった。そのまま青木さんのほうに伝えたら、OKの返事が来てしまった。思い返したら、とんでもないことだった」
プロのキャディの役割は、ただゴルフバッグを担いでクラブを渡すだけではない。選手が試合で勝てるようサポートし、時にはアドバイスも行う。個人競技のゴルフで、孤独な闘いを強いられる選手をサポートするのがキャディの役割である。ゴルファーにとってキャディとはパートナーであり、選手とキャディは一心同体でなくてはならない。それをプロのキャディではなくてアーティストである小田が務めるというのだから、やっぱりただごとではないのだ。
しかも、青木は世界で名の知れたスーパースターである。試合前日、酒に酔った小田がこんなことを話しかけた様子が映っている。
「青木さん、幸せですよ。僕なんかアメリカでレコード出せないんだから。契約取れないんだから。日本語の歌いらないって言うんだから」
「金田(正一)さんも長嶋(茂雄)さんも王(貞治)さんも同じこと言った」
青木の切り返しがすごい。日本人が世界のプロスポーツで活躍することが難しかった時代に、それをやってのけたのが青木功という人である。大谷翔平や松山英樹のずっと先を走っていた偉人なのだ。