『新宿野戦病院』平等という言葉の虚しさと残酷さ 宮藤官九郎が描く医療従事者たちの執念

『新宿野戦病院』平等の虚しさと残酷さ

 そうしたなかで勝どきの医療センターで研修医として働きながら、日本人第一号感染者の男性の死に目に立ち会うことになったヨウコ(小池栄子)は、14日間の出勤停止期間中に聖まごころ病院へと戻り、感染者を受け入れるための病床確保を提案する。あっという間に満床になり、対応に追われ、家に帰ることもできない亨(仲野太賀)をはじめとしたまごころの人々。そんななかで感染してしまう啓三(生瀬勝久)。ECMOの確保が追いつかず、受け入れ可能という電話が鳴るのをただ待つだけの日々。いかにも医療ドラマらしいドラマティックを選ばず、ひたすら患者を生かすために奔走する医療従事者たちの執念が、このエピソードにはしっかりと詰め込まれているではないか。

 いわずもがな、そのなかで織り交ぜられるカウンターパンチのように強烈な言葉とテーマ性はこれまでのエピソードと変わらずに存在し続ける。父である啓三に自分がウイルスをうつしてしまったかもしれないと悔やみ謝る亨に「いちいち謝るな」と檄を飛ばすヨウコ。パパ活を待つ少女たちが誰もいなくなった路上を見て、自分がこれまでやってきた活動の無力さを痛感する舞。厄災に直面して思い知らされる“平等”という言葉の虚しさと残酷さに、ごくわずかでも啓三が助かる可能性が見えて路上に泣き崩れる亨。誰もいない街のなかに一人残された舞の後ろ姿を映した(キャロル・リードの『第三の男』のラストで墓所を去る時のアリダ・ヴァリの後ろ姿と重なる)ラストショットに至るまで、またもやお見事の一言に尽きる。

■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜 22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/shinjuku-yasen/
公式X(旧Twitter):@shinjyuku_yasen
公式Instagram:@shinjyuku_yasen
公式TikTok:@shinjyuku_yasen

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