『虎に翼』井上祐貴が演じ分ける“二面性” 父との確執を乗り越える息子役の巧さ
そんな苛立った朋一とスマートな朋一の二面性を雰囲気を変えながら演じている井上だが、これまで演じてきた役を考えると正義感が強くまっすぐな性格のキャラクターがよく似合う。
『マルス-ゼロの革命-』(2024年/テレビ朝日系)では、ゼロ(道枝駿佑)を中心とした動画集団・新生マルスの一員・二瓶久高として出演。高校生でありながら短ラン・リーゼント・口髭の風貌で新生マルスの中ではお笑い担当だった。動画を使って社会の闇を暴きたいゼロは全体の雰囲気をシリアスにしがちだったが、二瓶はその志に共感しながらも持ち前の超ポジティブ思考でお調子者になり、全体を明るくしていた。
NHK大河ドラマ『どうする家康』(2023年)では、本多正信(松山ケンイチ)の息子・正純を演じた井上。若くて才があると家康(松本潤)に見込まれ、幕府に登用された正純は、その期待に応えるように正確な情報収集、まっすぐな正論と策で晩年の家康(松本潤)を側近として支えた。“イカサマ師”と呼ばれた父・正信と正純の関係は『虎に翼』の航一と朋一に似ていて良くはなかったが、正純には素直さがあったためか、父を反面教師にすることができ、家康にも「父のような不埒な生き方を許さぬことこそ、これからの世でございます」と言っている。だが後に、正信と正純の関係は改善した。
『虎に翼』では不貞腐れたような様子が目立つ朋一。だが、もともと井上が真面目な役柄を得意とするからこそ、それとは正反対の朋一の態度が引き立っているといえるのではないだろうか。ここから航一はどのように朋一との溝を埋めていくのだろう。それによって朋一がどのように変化していくのかも含めて、見つめていきたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、井上祐貴、尾碕真花、名村辰、松川尚瑠輝、渡邉美穂、菊池和澄、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK