失敗に終わった『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映 その理由と教訓

『SLAM DUNK』復活上映の理由と教訓

 8月第3週の動員ランキングは、公開3週目に入った『インサイド・ヘッド2』が週末3日間で動員37万2000人、興収4億9700万円をあげて2週連続1位となった。初週と第2週の興収比97%に続いて、第2週と第3週の興収比は95%と非常に高い推移で安定。金曜日から土曜日にかけて東日本に接近した台風に関する事前の(今になってみれば少々過剰だったとも言える)注意喚起や、それに伴う公共交通機関の計画運休や減便の影響がなければ、前週超えもあり得ただろう。

 先週末には、夏休み興行のど真ん中にもかかわらず、2022年12月に公開された『THE FIRST SLAM DUNK』の「復活上映」がメジャー配給作品の大作と同水準の全国383スクリーンという異例の規模でスタートした。5月にそのアナウンスがされた際は、それだけ多くのスクリーン数を押さえられるほど今夏は有力な新作が不足しているのかと衝撃を受けずにはいられなかったが、フタを開けてみれば『キングダム 大将軍の帰還』、『怪盗グルーのミニオン超変身』、『インサイド・ヘッド2』と爆発力こそないものの現時点までに例年並みのヒット作は出ていて、結果的に『THE FIRST SLAM DUNK』は初登場9位という期待外れとしか言いようがない興行となった。

 いざこうして数字が出てみると、逆にどこに勝算があったのだろうと訝ってしまうが、はっきりしているのは勝算どうこうよりも、配給の東映の止むに止まれぬ理由があったということだ。というのも、今夏の東映は7月26日に『仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク』/『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』を公開した後、9月13日公開の『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』まで新作の公開がないのだ。ちなみに、昨夏は同じく『仮面ライダー』シリーズと『プリキュア』シリーズの間に、『リボルバー・リリー』、『Gメン』、『禁じられた遊び』と3本の実写作品を公開していた。いずれの作品も興行的には芳しい結果を残せなかったわけだが、それも受けてアニメーション作品かシリーズ作品以外の企画が成り立ちにくくなっていること、かつてのような旧ジャニーズ事務所所属タレントの主演映画(『Gメン』と『禁じられた遊び』はそうだった)の量産体制が崩れてきたこと、などの事情が見え隠れしている。

 「勝算」というよりも「賭け」として、もしかしたらパリ・オリンピックでのバスケ日本代表の躍進を期待していたのかもしれないが、日本代表の戦績にかかわらず、少なくとも前回の東京オリンピック前後から、オリンピック景気を当てこんだ作品はフィクション作品もドキュメンタリー作品も総じて苦戦している(東映も今年6月に『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』を公開しているが、大きな話題にはならなかった)。オリンピックと映画興行の連動は「もうそういう時代ではない」とそろそろ諦めた方がいいのではないか。

 『THE FIRST SLAM DUNK』が素晴らしい作品であることは言うまでもないし、主要舞台の設定が夏であった同作を、夏が来るたびに「復活上映」するというアイデア自体は、作品の一部ファンダムのニーズを満たすものなのだろう。ここで疑問視しているのは、あくまでもその公開規模について。少なくとも、今回の「復活上映」は失敗に終わった。そのことは、誰かがこうして書き留めておくべきだろう。

■公開情報
『THE FIRST SLAM DUNK』
復活上映中
原作・脚本・監督:井上雄彦
演出:宮原直樹、北田勝彦、大橋聡雄、元田康弘、菅沼芙実彦、鎌谷悠
キャラクターデザイン:井上雄彦、江原康之
CG ディレクター:中沢大樹
作画監督:江原康之
サブキャラクターデザイン:番由紀子
モデルSV:吉國圭、BG
プロップSV:佐藤裕記、R&D
リグSV:西谷浩人
アニメーションSV:松井一樹
エフェクトSV:松浦太郎
ショットSV:木全俊明
美術監督:小倉一男
美術設定:須江信人
色彩設計:古性史織
撮影監督:中村俊介
編集:瀧田隆一
音響演出:笠松広司
録音:名倉靖
キャスティングプロデューサー:杉山好美
音楽プロデューサー:小池隆太
2Dプロデューサー:毛利健太郎
CGプロデューサー:小倉裕太
アニメーションプロデューサー:西川和宏
プロデューサー:松井俊之
声:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太
オープニング主題歌:The Birthday(UNIVERSAL SIGMA)
エンディング主題歌:10-FEET(EMI Records)
音楽:武部聡志、TAKUMA(10-FEET)
アニメーション制作:東映アニメーション、ダンデライオンアニメーションスタジオ
配給:東映
©︎I.T.PLANNING,INC. ©︎2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners
公式サイト:https://slamdunk-movie.jp/
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