玉山鉄二、年齢を重ねるごとに増す“渋み” 『笑うマトリョーシカ』鈴木役の重厚な存在感
誰が誰の操り人形なのか。様々な思惑が混線する『笑うマトリョーシカ』(TBS系)は、終始違和感が漂う歪な関係性が描かれるが、その違和感を大きく牽引しながらどんどん異なる表情を見せるのが政務秘書官・鈴木俊哉役を演じる玉山鉄二だろう。未来の総理大臣候補ともいわれる若き人気政治家・清家一郎(櫻井翔)のブレーンとして、高校時代から彼を政治家にするために暗躍し続けていた。
最初は父親がBG株事件の主犯格として逮捕され政治家にはなれない鈴木が、政治家を目指す清家を育て上げ仇を取ることを決める。しかし実は清家を操る学年一の秀才・鈴木自身が、彼の妖艶な母親・浩子(高岡早紀)に唆されて絡めとられていく。
清家と二人三脚で政界をのし上がってきた鈴木は、彼が完全に自分の影響下で支配下にあると思っており「清家は俺がいなきゃダメだ」に留まらず「清家は俺のものだ」とまで言い切る。その様子は異様だ。
鈴木役を演じる玉山は、冷静沈着で重厚感があり“陰のフィクサー”という今回の役どころも説得力が非常にある。また落ち着いているが涼しげな声色も今回のそつがなさそうな役柄によくマッチしている。
だからこそ、高校時代から「俺がいないとお前は何も出来ないんだな」と侮り続けながらも、友人である清家の夢に自分の野望をのせて実現すべく全力を捧げてきた鈴木が、あっさり清家から切り捨てられ、涙する場面にはそこはかとない人間臭さが宿っていた。“飼い犬に手を噛まれた”状態の鈴木は、清家が自分よりも浩子の影響を強く受けていたことに愕然。しかしそこには、純粋に並々ならぬ絆で結ばれていると思っていた友人から呆気なくとかげのしっぽ切りをされたことへのショックも多分に含まれていた。
本作では清家をコントロールしながらふさわしい仮面を被せた彼と共依存のような関係を強め、自分自身が清家の本当の表情を見誤っていたことに気づく鈴木の“再生”まで描かれる。