『西園寺さん』が描く“人に寄り添うこと”の意味 視聴者を没入させる“必然”の積み重ね
「僕が広まれば、って言ってるのは、こう……考え方っていうか。家族以外にも頼れる人がいるんだぞって。僕もですけど、みんな頼るのが下手なんで」
「家族って距離が近いせいで、良くも悪くも影響が強いっていうか。だからこそ、こども食堂みたいな、家族じゃない存在も必要なんだと思います」
横井のこの言葉、そして、西園寺さんと楠見とルカの「偽家族」が模索していることは、共助・互助の理想だ。
西園寺さんに想いを寄せる横井は、一度は恋心余って「今は、あなたを救うことができる。守ってあげられる」と告げた。しかし後から、「守ってあげられるなんておこがましかったですよね」と詫びる。このドラマでは常に、人と人との距離感やコミュニケーションについての問いかけがなされている。「寄り添う寄り添う」とやたらと簡単に口にするけれど、本当の意味で「人に寄り添う」とはどういうことなのか。
横井は、一時は楠見に嫉妬していたことを正直に打ち明けたうえで、「偽家族は僕の理想です。大いに賛同します」と西園寺さんに言う。そして、「これからの僕をよく見ててほしいと思います。本当にこのシステムを前向きに受け入れているかどうか、それを見極めたうえで返事をもらえたらと思います。なので今、仮彼氏っていうのはどうでしょうか」と申し出る。
大切なのは対話であり、相手を「知る」こと。「受容」の手前にまず「理解」がある。みんな変で、みんな普通なのだ。人と人が、プロセスを踏んで関係性を構築していく姿が、この作品には瑞々しく描かれている。そのプロセスは様々で、西園寺さんのような「バババーッ」が垣根を突破することもあるし、「しおしお野菜スープ」のように後からじんわり沁みてくることもある。
本作が提示する広義の「家族愛」。それはつまり、「人間愛」と言い換えることもできるだろう。西園寺さん、楠見、ルカ、横井は、「家族とは何か」「人間愛とは何か」という問いに、どんな答えを見つけるのだろうか。物語の終盤を見守りたい。
■放送情報
火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:松本若菜、松村北斗(SixTONES)、倉田瑛茉、藤井隆、濱田マリ、横田真悠、水澤紳吾、うらじぬの、大朏岳優、塚本高史、野呂佳代、村川絵梨、浅野和之
原作:ひうらさとる『西園寺さんは家事をしない』(講談社『BE・LOVE』連載)
脚本:宮本武史、山下すばる
主題歌:BUMP OF CHICKEN「strawberry」(TOY'S FACTORY)
演出:竹村謙太郎、井村太一、山本剛義、渡部篤史
プロデューサー:岩崎愛奈、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
製作:TBSスパークル
©TBS
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