『海のはじまり』泉谷星奈が見せた全ての感情を表現した涙 夏と海だけが共有できる悲しみ

『海のはじまり』泉谷星奈が見せた涙

 子どもを望んでいても授からない人がいる一方で、思いがけないタイミングで妊娠する人もいる。同時に、現代社会では「子どもを持たない」という選択肢もあるだろう。しかし、どの道を選んでも、その決断に“絶対”はない。水季は、朱音が不妊治療の末にやっと授かった子供だった。

 さらにその夜、夏から電話を受けた母・ゆき子(西田尚美)は、夫の和哉(林泰文)と息子の大和(木戸大聖)に、夏が家族全員に話があると言っていたことを伝える。月岡家では、これは弥生との結婚報告ではないかと期待に胸を膨らませるが……。

 海の誕生日、今回は弥生も一緒に南雲家を訪れる。海の希望で、3人は水季が以前働いていた図書館へ向かうことになった。弥生、海、夏の3人での外出は、新しい家族の形を模索するかのようで、温かな雰囲気に包まれていた。

 この図書館というのは、海にとって特別な意味を持つ場所だ。母親との楽しい思い出が詰まった空間であり、懐かしさと同時に、母の不在を強く感じさせる。海の複雑な表情から伝わってくるのは、その心の揺れだった。

 場面は変わり、夏が海に向かって語りかける。これまで、ずっと“いい子”すぎるほどに自分の感情を見せてこなかった海に、夏は厳しい言葉をかけた。

「悲しいものを悲しいって、吐き出さないと」

 そして次の瞬間。海が傷つかないようにと、優しい言葉で介入しようとする弥生ではなく、夏にしがみつき、涙を流し始める海。泉谷星奈演じる海の涙には、これまで抑えてきた感情のすべてが詰まっているように見えた。

 泉谷は、2022年放送の『オールドルーキー』(TBS系)で綾野剛演じる主人公の娘役、2023年放送の『いちばんすきな花』(フジテレビ系)で今田美桜演じる夜々の幼少期、『厨房のありす』(日本テレビ系)の幼少期のありす役など、人気ドラマに続々と出演し、その演技力を高く評価されている子役だ。ようやく夏の前で涙を見せた海が今後どんな表情を見せていくのかも気になるところ。

 海と夏の絆は、日を追うごとに深まっていく。しかし、その関係性の陰には、既に亡き人となった水季との思い出が常に存在している。

 第3話の海の涙を見ながら、実は最も泣きたい衝動に駆られたのは弥生だったのではないだろうか。3人での外出を通して、弥生だけが「共有しきれていないもの」があることに気がついていた視聴者も多かったはず。

 それは水季を失った深い悲しみだ。人の死を経験し、その悲しみを乗り越えることの重さは、実際に失った者にしか本当にはわからない。「水季の代わりにはなれないけど、一緒にはいれる」と言い切った夏だが、その“水季の代わり”という潜在的な想いは、今の3人の関係性に絶妙な影を落としている。

 弥生の目に映る海の涙は、自分には共有できない夏との特別な絆を象徴しているように見えたかもしれない。夏と海が共有する悲しみは、第4話以降、弥生の心にどう根付いていくのだろうか。

参照
※ https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/22/dl/kekka5.pdf

■放送情報
『海のはじまり』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:目黒蓮、有村架純、泉谷星奈、木戸大聖、古川琴音、池松壮亮、大竹しのぶほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、ジョン・ウンヒ
主題歌:back number「新しい恋人達に」(ユニバーサル シグマ)
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/uminohajimari/
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