『海のはじまり』泉谷星奈が見せた全ての感情を表現した涙 夏と海だけが共有できる悲しみ

『海のはじまり』泉谷星奈が見せた涙

 人を失う悲しみは、心に深く刻まれる静かな痛みだ。しかし、その悲しみは時として、人々を思いがけない形でつなぎ合わせる不思議な力を持つ。共に経験した喪失が、新たな絆を紡ぎだし、互いの心の奥底を理解し合う糸口となることがある。

 フジテレビ系月9ドラマ『海のはじまり』第3話が繊細な筆致で描き出したのは、大切な人を失った悲しみを通じて惹かれ合う人々の姿だ。一方で、本作は失われたものへの想いが紡ぐ、“絆の輪”の中に入りきれない者の微妙な心の揺れも見逃さない。

 心を決めて、恋人の弥生(有村架純)に実は自分には娘がいると打ち明けた夏(目黒蓮)。そして、元恋人・水季(古川琴音)との別れの経緯を詳しく語り始める。水季が海(泉谷星奈)という名の娘を産み、一人で育てていたこと。そして自分は、別れる前に水季が妊娠したことは知っていたものの、堕胎したものと思い込んでいたということを。夏の意外な過去の告白に、「あなたが父親になるのなら、私も母親になる可能性を考えてほしい」と答えた弥生。自分もまた、夏に打ち明けられずにいる過去があることを思い出したのだった。

 ちなみに令和4年の厚生労働省の調査によると、国内で実施された人工妊娠中絶件数は12万2,725件(※)と前年度より減少傾向にあるものの、依然として看過できない数字となっている。総数は減少傾向にある一方で、若年層での増加が見られるという懸念すべき傾向も報告されている。本作が人工妊娠中絶についての見解を一つのテーマとしている中で、弥生のように隠れた傷を追っている人たちが少なからずいることを想像せずにはいられない。

 その後、夏は南雲家を訪れ、そこで娘の海と再会を果たす。父親が会いに来てくれたことに海は歓喜し、興奮のあまり疲れ果てて眠ってしまう。朱音(大竹しのぶ)は、海が目覚めた時に夏がいてくれれば喜ぶだろうと考え、夕食を共にするよう夏を誘う。夕食の準備を手伝いながら、夏は朱音から水季の話を聞くことに。

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