『虎に翼』寅子が“昭和のお父さん”状態に 朝ドラヒロインには“反感を買う”時期が不可欠?

『虎に翼』寅子が“昭和のお父さん”状態に

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、主人公・寅子(伊藤沙莉)は、家庭裁判所の裁判官となり、アメリカに視察に行くほど仕事に邁進している。家族が暮らす収入を得るために、バリバリ働いている寅子だが、女性裁判官として有名になり、大忙しの日々の中、家のことは完全に花江(森田望智)に任せっきりで、娘・優未(竹澤咲子)の気持ちにも寄り添えないでいる。

 家庭を顧みず、「仕事だから仕方ない」「外で稼いでいるんだから、家事・育児にまで手が回らない」という今の寅子は、“昭和のお父さん”のような状態だ。家を守り、優未のお母さんの役割までしている花江は、まるで寅子の妻のようで、ずっと我慢を強いられている。

 アメリカ視察から戻った寅子の態度は、かなり自分本位で、女性司法修習生たちに対しても、「あなたたちは恵まれているんだから頑張らないとね」などと上から目線。一体、寅子はどうしちゃったのだろう。花江や優未が気の毒だし、鼻高々で偉そうな今の寅子のことは、ちょっと嫌いにならざるを得ない。

 近年の朝ドラでも、寅子と同じように、ヒロインの描写がところどころ鼻についたり、ある言動によって反感を買ったりして、一時的に視聴者から嫌われたりすることがあった。そんな朝ドラヒロインのエピソードを、いくつか振り返ってみよう。

 『舞いあがれ!』の舞(福原遥)は、母・めぐみ(永作博美)が工場をたたむという苦渋の決断をした際、「ホンマに工場やめんの? なんで? 助かる方法あるかもしれへんやん!」とめぐみを問い詰めて泣き、「私も手伝うから!」と説得しようとしていた。視聴者からは、舞の甘さを指摘する声が上がり、「手伝う」という言葉からは、パイロットになる夢がある舞に対して、本気で母を助ける覚悟が感じられないと批判された。

 また、兄・悠人(横山裕)には、工場への投資を頼むも断られ、「工場なくなってしもたら、二度と取り戻されへんねんで。後から悔やんでも遅いんやで! ケンカしたまま、二度と会われへんようになったんと同じで」と、悠人が父・浩太(高橋克典)と和解できずに死別したことを思い出させて、責め立てた。この時の舞に対しても、視聴者からは「後悔している悠人をここまで傷つけるなんて……」とガッカリした声が上がった。

 『ちむどんどん』の暢子(黒島結菜)は、天真爛漫で元気いっぱいのヒロインだが、ほかの客がいるレストランでも大声で話したり、目上の人にも敬語を使わなかったり、きちんと挨拶ができなかったりという設定だったため、イライラしてしまう視聴者が続出。就職先のレストラン「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)に逆らい、料理対決を挑んだ時などは、「暢子は勝手すぎる」「生意気だと思う」という声も。

 天真爛漫なヒロインと言えば、『半分、青い。』の鈴愛(永野芽郁)が思い出される。明るくて前向きで、ユニークな感性を持っている鈴愛だが、悪気なく失礼なことを言う面があり、彼女に対して苦手意識を持ってしまう視聴者もいたようだ。漫画家・秋風羽織(豊川悦司)のもとで働いていた際、家族仲の良くない同僚のユーコ(清野菜名)が、母親との電話で敬語を使っているのを聞いた鈴愛は、ユーコに「まさか継母とか?」と言っていた。これは、あまりにも無神経と言わざるを得ず、嫌われるヒロイン描写の一つとして印象的だ。

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