『虎に翼』寅子が“昭和のお父さん”状態に 朝ドラヒロインには“反感を買う”時期が不可欠?

『虎に翼』寅子が“昭和のお父さん”状態に

 『なつぞら』は、戦災孤児だったヒロイン・なつ(広瀬すず)が、北海道・十勝の広大な大自然の中、たくましく成長し、上京後はアニメーターを目指すようになる物語。なつは画力は足らないものの、「東洋動画」作画課の課長・仲(井浦新)の強い推薦とフォローによって、アニメーターとして成長していく。困難に負けないヒロイン像を描くはずが、とんとん拍子に出世していくように見え、視聴者からは「何でなつだけが無条件で贔屓されるのか分からない」とか、「こんな女性とは同じ職場で働きたくない」といった批判の声が上がった。

 高校のクラスメイトだった雪次郎(山田裕貴)が、菓子職人の修業をやめて、役者になりたいと言った際には、なつは猛反対し、「いいの? 本当に家族を裏切って」と、雪次郎を説得しようとしていたが、なつ自身も一度は手伝うことを決めていた牧場を出て、夢を追いかけるために上京したので、「自分はやりたいことを好きにやっているのに、人には反対するって何なの?」「自分が気に入らないから、反対してるようにしか見えない」など、視聴者からやや嫌われ気味のヒロインとなってしまった。

 全体的に見れば、いいところのたくさんある朝ドラヒロインたち。そんなヒロインが持つ負の側面も描くことで、視聴者はより彼女たちを欠点のある1人の人間としてリアルに感じることができるようになる。

 『舞いあがれ!』や『ちむどんどん』を観ていて感じるのは、人間誰しも調子に乗ってしまう時期があるということ。そこから視野を広げ、周囲にも気を配れるようになるかが成長の分かれ目だ。

 『虎に翼』の寅子も、花江の不満や優未の本心にしっかりと耳を傾け、自分が自信過剰気味だとすぐに気づいて、態度を改めるようになると信じたい。そうすれば、きっと以前のような、いや、むしろ前以上に視聴者から愛される寅子になる日は近いはずだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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