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『SKYキャッスル』の重要ワード“SKY”とは? 韓国ドラマが問い直す“超学歴社会”の弊害
『SKYキャッスル』の「入試コーディネーター」は実在する?
『SKYキャッスル』のストーリーを盛り上げるキャラクターの中でも、ひときわ異彩を放つのが、入試コーディネーターのキム・ジュヨン(キム・ソヒョン)だ。VIPだけがひそかにコンタクトを取れるコーディネーターの中でも、ソウル大入学査定管出身の彼女は、請け負う生徒は年に2人までとハードルが高い。その代わり、どんな手段を使ってでも100%合格させる凄腕だ。ところで、ジュヨンのような入試コーディネートは実在するのだろうか。
2004年頃に伝説の“イルタ講師”として名を馳せ、現在は入試願書代行企業「ユーウェイ」の所長であるイ・マンギは、「ドラマで描かれる私教育の様子は、70%現実」(※5)と製作陣のリサーチ力に舌を巻く。入試コーディネーターも、大っぴらではないが“コンサルタント”という呼び名で実在するそうだ。
ソジンはジュヨンへの依頼金を工面しようと、不仲の義母に頭を下げる。その金額は、比喩として「アパート一軒分」とされるが、法的に定められた入試コンサルティング費用は1分当たり5000ウォン(日本円で約574円)程度。一方、不当に高額なコンサルタント料の入試コーディネーターは、その10倍で受け持つこともあるそうだ。入試コーディネーターが存在感を持つようになった背景は、やはりポートフォリオなど複雑すぎる入試制度だ。受験生の中で優位になるスペックは、求めればきりがない。 私教育は、誰よりも優位に立ちたいという受験生とその親たちの、際限ない欲望と不安を満たしてくれるのだとイ所長は指摘している。
学歴偏重社会の悲劇を終わらせるためのヒューマンドラマ
5月28日に最終回を迎えたドラマ『ソンジェ背負って走れ』で活躍したキム・ヘユンとソン・ゴニがそれぞれ娘と息子の役で登場し、すでに卓抜した演技力を見せるなど、主題以外でも見どころの多い『SKYキャッスル』。だがやはり視聴率1.7%から23.8%の快進撃を飛ばし語り継がれる作品となったのは、人生の根本的な価値について今一度問い直すドラマでもあったからだろう。第1話では、息子を名門大学へ入学させ、幸せの絶頂にいるはずのミョンジュが猟銃で自殺を図るシーンが描かれる。韓国での受験の成功には母親の協力が必須と言われ、ゆえに母たちは子供を思うあまり誤った手段に出たり、子供を抑圧してしまう。
耐え難い悲劇から始まる本作には、“果たして高学歴が真の幸福なのか?”という疑問が通奏低音のように流れ続ける。付け入る隙を相手に与えない冷徹さの影で、天才と呼ばれたジュヨンもまた、娘への悔恨に苦しんでいる。韓国上流層の富・名誉・権力への執着や、親たちの欲望を背負わせられる子どもたちへの圧迫教育など、そういった部分をあえてリアルに描き出すことで、行きすぎた学歴社会・格差社会に歯止めをかけるきっかけを作りたいとチョ・ヒョンタク監督は願いを込めたそうだ(※6)。ひょんなことからSKYキャッスルへ越してきた、童話作家のスイムとウジュら親子は、高学歴や名誉、富への欲が尽きない住民たちとは全く逆の生き方をしており、作り手の代弁者として登場しているのだろう。
韓国でこれほどまでに学歴が重要視されている理由の根本には、日本の植民地統治や朝鮮戦争を経験した国民にとって、学歴のみが略奪や破壊の恐れのない唯一の資産であるという信念があるともされている(※7)。痛ましい歴史を背景に、社会をよりよく前進させるための作品を生み出し続けていることが、韓国エンタメの力強さなのだろう。
参考
※1 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75743?site=nli
※2 https://www.asahi.com/edua/article/14056265
※3 https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/07/24/33144.html
※4 https://moviewalker.jp/news/article/1126397/
※5 https://www.joongang.co.kr/article/23231601
※6 https://www.bsfuji.tv/skycastle/
※7 https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/10510/files/KyoikugakuKenkyukaKiyoBetsu_21_2_Lee.pdf
■配信情報
『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』
Netflix、Prime Videoほかにて配信中
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