『SKYキャッスル』はリメイク作視聴前に必見! 上品な社会風刺は観始めたら抜け出せない

『SKYキャッスル』は観始めたら抜け出せない

 7月25日からテレビ朝日でリメイク作が放送される、韓国の大ヒットドラマ『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』(以下、『SKYキャッスル』)。 

 本国でのブレイクぶりに比べ、日本では原作ドラマがあまり話題にならなかった気もするが、実は韓国でも2018年の放送当初はまったく注目されておらず、視聴率は1%台からスタートした。それがその後、ぐんぐんと視聴率を上げ、最終回は23%以上を記録。韓国で社会現象を巻き起こすまでに至った。

 このドラマがここまでの人気を集めたのは、韓国の富裕層の歪んだ教育熱を、それまでなかったスタイルで描き出したことが大きい。

 物語は、“SKYキャッスル”というヨーロッパ風の高級住宅街を舞台に繰り広げられる。特徴的なのは、韓国ドラマでよく見る財閥ではなく、SKYキャッスルで暮らす上流階級の4つの家族が主人公だということだ。

 選ばれた者だけしか住めず、子どもを高学歴に導く最適な場といわれるSKYキャッスル。ところが、息子をソウル大医学部に合格させ、成功の象徴として母親たちに崇められていた住人が突然自ら命を絶つ。そのことを発端に、ほかの住人とは異なる価値観をもつ新しい隣人、名門大合格率100%の入試コーディネーターが均衡を崩し、誰もが憧れていたSKYキャッスルが砂上の楼閣であったことがわかってくる。

 本作は、“ドロドロ”と紹介されることもあるが、これまでの韓国ドラマのドロドロ愛憎劇的な作品とは一線を画す。確かに、スタディーキューブ(周囲から隔離されて勉強できる木製の箱)を子ども部屋に置いていたり、親同士の取っ組み合いがあったり、リビングの真ん中にピラミッドを置く奇怪な夫が登場したりと、なかなかな描写もあり、大枠は壮絶な愛憎劇『ペントハウス』を思わせる。だが、実際観始めてみると、拍子抜けするほど上品で、じっくり腰を据えて観たくなるのである。

 韓国では「韓国社会を知りたいなら『SKYキャッスル』を観たほうがいい」と言われたりするそうだが(※)、ブラックユーモアたっぷりに親のエゴの滑稽さを描くなど、とにかく社会風刺がピリリと上品に利いている。そもそもタイトルにもなっている“SKYキャッスル”の“SKY”は、韓国の三大名門大学(ソウル大学(S)、高麗大学(K)、延世大学(Y))の意味が込められているというところから皮肉たっぷりだ。韓国の上流階級では“SKY”でないと認めない風潮があるという。

 演出は、スリリングでありながらスタイリッシュ。例えば前述した親同士の取っ組み合いのシーンは、バックにクラシックを思わせる緩やかなBGMを流し、シニカルな雰囲気に味付けされている。手ブレのカメラで緊張感を煽ったり、手のクローズアップだけでその人物の感情の揺れ動きを見せたりと、すみずみまで丁寧に計算されつくされている。ちなみに本作の演出は、最近人気を博したNetflix配信のドラマ『ヒーローではないけれど』のチョ・ヒョンタク監督。同作も、独特の映像美がドラマを彩っていた。

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