永野芽郁に誰もがからかわれる 『からかい上手の高木さん』を成立させた“感情を秘する”芝居

『高木さん』にみる永野芽郁の“秘する”芝居

 封切りから間もなく1カ月が経とうとしている主演映画『からかい上手の高木さん』が好評の永野芽郁。これはとある男女の日常を追いかけた作品だが、ふたりの様子は見ていて微笑ましく、ちょっとだけやきもきさせられたりもする。どこか懐かしさを感じる作品であり、多くの観客が劇中のふたりに過去の自分を重ね合わせたりしているのではないだろうか。それもこれも、永野たちの好演によるところが大きい。

 本作で永野が演じているのは、タイトルロールの高木さんだ。中学生時代に隣の席の西片(高橋文哉)をいつもからかっていた彼女が、10年ぶりに彼の前に姿を現すところから物語ははじまる。舞台は豊かな自然に囲まれたとある島。母校で体育教師として奮闘する西片のもとに、高木さんが教育実習生としてやってくるのだ。観客の誰もがふたりの間にある恋愛的な感情の動きに気がつくだろう。果たしてそれがどのように発展していくのか、その成り行きを見つめることになるわけだ。

 永野が男女の恋愛模様を演じた作品はすでにたくさんある。主演作にして彼女の代表作である朝ドラ『半分、青い。』(2018年度前期/NHK総合)では、中村倫也や間宮祥太朗らが演じる青年たちと恋愛模様を展開させ、毎朝ドキドキしながらその様子を見守っていたものだ。同作への出演を機に、永野は主演俳優として作品の看板を背負うことのできる現在の地位を確立。不治の病におかされた少女を演じた『君は月夜に光り輝く』(2019年)、映画を愛する人々の群像劇『キネマの神様』(2021年)、『そして、バトンは渡された』(2021年)などで身を投じた恋愛、大切な人への献身的な愛を体現した『君が心をくれたから』(フジテレビ系)での好演も記憶に新しい。

 ここに並べた作品の恋愛模様には、劇的な瞬間が多々あった。永野が演じたキャラクターたちはいずれも自身の心の動きに合わせて、ドラマチックな演出が施されたシーンの中で思い切った言動をしてきたものだ。ところが高木さんは違う。かなり違う。圧倒的に違う。劇中でドラマチックな演出というものは控えめで、彼女の内に秘めた恋心を示唆する言動も極めて少ない。いつもからかわれてばかりの西片と同様に、彼女の“心の動き”がうまく掴めない私たちもまたからかわれ続けるのだ。

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