三浦翔平×竜星涼、対照的な芝居が『光る君へ』の魅力に 伊周の泣き顔と隆家の笑顔

『光る君へ』三浦翔平×竜星涼の対照的な芝居

 結局、伊周と隆家は配流となった。この処罰は一条天皇の温情に他ならないが、元来プライドの高い伊周には到底受け入れられるものではない。皮肉にも、「俺はどこにも行かぬ!」「太宰府など死んでもゆくものか!」と人目もはばからずに怒鳴り散らす伊周の姿こそ、彼の真の姿のように思える。

 片や隆家は、物語序盤こそ兄の態度に呆れ切っていたが、弱り切った兄を責めるほど冷酷な人間ではない。配流されることを拒み続ける兄への「行くしかありませぬ、兄上」という声色は突き放すようなものではなく、むしろ兄の苦しみを理解したうえでの説得の言葉に聞こえた。思い返すと竜星の台詞の言い回しは巧みだ。初登場時にはトラブルメーカーのような雰囲気を漂わせていたが、彼の言動は決して家族をないがしろにするものではない。物怖じしない態度にしばしば驚かされるが、“冷静かつ闊達な性格”だからこそ簡単には動じないというだけだ。兄・伊周の人物像との大きな違いは別れの言葉に表れている。貴子が遠い地へと流される我が子に涙を流すと、隆家は「お健やかに」と笑いかけた。

 自身に下った処分を真摯に受け止め、母を気遣い去って行った隆家とは対照的に、伊周は「どこにも行かぬ」と意地を張り続けた。自分のことばかり考えている伊周は、覚悟を決めた弟とは対照的に逃げ惑う。その姿はいたたまれないほど無様だった。

 第20回は、気高い姿から無様に逃げ惑う姿まで演じ切った三浦と、一癖も二癖もあるが度量が大きい人物像をありありと感じさせた竜星の演技に魅了される回となった。安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が「隆家様は、いずれあなた様(道長)の強いお力となりまする」「(伊周は)あなた様次第にございます」と言っていたが、今後の物語において、伊周と隆家がどのように関わってくるのか。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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