『ヒーローではないけれど』が描く現代人の悩み チャン・ギヨンがロマンス職人の本領発揮

『ヒーローではないけれど』から目が離せない

 ギジュは、「幸せな時間に戻ることが出来る」という能力を持ちながら、うつ病になり、「幸せな時間」が感じられない。よって、彼は過去に戻るタイムトラベルができなくなり、苦しんでいた。妻が死んだ時間に囚われていたギジュだが、ダヘと出会い心を動かされ、彼の時間が流れ始める。

 ダヘもまた、詐欺師一家の養母イルホン(キム・クムスン)から、「不幸しかない女」「それを元に生きていくしかない」と言われ、過去の不幸をネタにして生きてきた。しかし、ギジュたちと暮らすうちに、それぞれが抱える悩みを知っていく。

 強調しておきたいのは、自暴自棄でだらしない姿でもチャン・ギヨンはめちゃくちゃカッコいいということだ。彼の鋭い眼差しと、彫刻のような通った鼻筋、モデル出身の抜群のスタイルの良さに、低音ボイスが心地よく響き、ギジュから目が離せなくなる。チャン・ギヨンが“崩れたものの持つ魅力”を演じることで、放っておけない気持ちにさせられる。ギジュと関わる中で、チャン・ギヨン演じるギジュが、立ち直っていくさまも見どころの一つだろう。そして、なんといっても最大の見どころは、ギジュとダヘの恋愛だ。「もっと相手のことを知りたい」は、恋愛の初期における必須感情。すでにギジュもダヘも、このゾーンに入りだした。

 ギジュのタイムトラベルの能力を利用し、ダヘはギジュに婚姻届を渡すのだが、ギジュは「愛することが先だ」と言い、「本当に恋に落ちるのか見てみよう」とダヘに突然キスをする。韓国ドラマあるあるの“ハプニングキス”が入り、ドラマは急激に盛り上がりを見せる。恋愛ものにおけるチャン・ギヨンの本領発揮だ。

 娘イナにダヘが見せる優しさで、ギジュがダヘに惹かれだしたように、ダヘもまたギジュに助けられて、彼を気にし出している。ここからふたりが急激に互いを意識し合いながら、家族も巻き込み、一家みんながダヘとの出会いによって大きく変容してみせるのだろう。ギジュもダヘも互いに傷を負った者同士だが、相手を助けることが実は自分を助けていることになる。“13年前の火事”や、ダヘの存在とギジュ一家の関係に隠された謎など、伏線の種も巻かれ、今後の展開が楽しみだ。チャン・ギヨンとチョン・ウヒは、一体どんなケミストリーを見せてくれるのだろうか。

■配信情報
『ヒーローではないけれど』
Netflixにて配信中
出演:チャン・ギヨン、チョン・ウヒ
(写真はJTBC公式サイトより)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる