『涙の女王』“悪役”パク・ソンフンの気になる存在感 180度違う顔が楽しめる過去作も

『涙の女王』パク・ソンフンの気になる存在感

 キム・スヒョン×キム・ジウォン主演のドラマ『涙の女王』が、韓国で『愛の不時着』を越える視聴率を記録し、最終回を迎えた。放送開始当初から、『愛の不時着』のパク・ジウンが脚本を手掛けるということで話題になっていたが、回を重ねるごとにキム・スヒョンが演じるペク・ヒョヌとホン・へインが演じるキム・ジウォンの演技に魅了された人も多いだろう。

 一方でヒョヌとヘインの間に入り込み、徹底的に邪魔をする悪役、ユン・ウンソンを演じ存在感を示したパク・ソンフンに注目した人も多かったのではないだろうか。今回はパク・ソンフンにスポットを当て、彼が過去に出演した作品に触れながら魅力を語ってみたい。(以下、最終話までのネタバレあり)

愛に飢えた男・ウンソンを熱演したパク・ソンフン

 パク・ソンフンが演じるウンソンは、アメリカ・ウォール街でキャリアを積んだM&Aの専門家で優秀な投資家、そしてヘインの大学時代の友人だ。実は学生時代、ヘインに想いを寄せていたものの、彼の想いはヘインに届かなかった。なぜならヘインは、ウンソンの「影」の部分に当時から気付いていたため、避けていたからだ。

 ウンソンは知性あふれるエリート風だが、幼い頃に母親のモ・スリ(イ・ミスク)に捨てられ、幼少期を施設で過ごした。それが彼の「影」の部分を作ったといえる。彼の人間性を特徴的に表しているのが、幼い頃にウンソンが殺してしまったシェパードの飼い主に対して放った言葉だ。

 「高価な犬だったのに、何てことをしてくれたんだ!!」と怒る飼い主に対し、「安い犬だったら殺してもいいのか」とぼそりとつぶやくウンソン。まわりの大人たちはこの一言に凍りつくが、ウンソンのこのような考え方が、その後の人間性を形成していったと言っていいかもしれない。

 ウンソンは、実母であるスリと組んで、クイーンズグループを乗っ取り、地位や名誉、金を手にしようと画策するが、最も欲していたのはヘインその人だった。ヘインへの執着心はおぞましいものがあり、ヘインにとって「運命の相手」であるヒョヌをとことん遠ざけようと必死になる。

 物語が展開していく中、ウンソンのしつこさに狂気を覚えた人もいただろうし、最後にヘインはウンソンに殺されてしまうのではないかとビクビクしながら展開を見守った人もいるだろう。

 最終話となる第16話で、ウンソンは最大の見せ場を作ってくれた。力づくでヘインを自分のものにしようとしたが失敗し、ヒョヌと一緒に逃げようとしたヘインに銃口を向けたシーンだ。「今ならまだ間に合う。一緒に行こう」とヘインに手を差し出すものの、ヘインから「死んでも行かない」と言われた瞬間に表情を凍らせ、涙を流しながらヘインを撃ってしまう(結局は、ヒョヌがかばって代わりに撃たれるが……)。この時、ウンソンの鬼気迫る演技に飲み込まれてしまったのは、筆者だけではないだろう。

 愛に飢え、貧しい境遇から必死に努力をして上り詰めたのに、最後の最後で一番手に入れたかった女性に拒否された悲しみをパク・ソンフンは熱演。ヒョヌとヘインの仲を執拗に妨害した憎い悪役だが、このシーンでパク・ソンフンが見せた、なんとも悲しげな表情で心から憎むことができなくなってしまった。

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