鈴木亮平の肉体には“実写ならでは”の魅力がある 『シティーハンター』は理想的な成功例に

『シティーハンター』実写化の理想的な成功例

「実写ならでは」の魅力が鈴木亮平の肉体にはある

 「実写」とは何か。実写とは実際の風景や生身の肉体を持つ人物を映すことである。VFX技術の発展で、現実には存在しないものをあたかも存在しているかのように表現することが可能になり、いまやどんな世界もリアルに映像化できる時代となった。AI技術の発達はそれに拍車をかけるだろう。一方で技術発展の恩恵はアニメーション表現にも大きな影響を与え、実写映画に劣らない迫力を備えた作品が次々と生まれている。

 総じて、現在の映像文化は、実写とアニメーションの技術的な差異は縮まり、マンガやアニメーション作品の世界観を写実的に表現可能となった時代に突入している。同時に、それは「なぜその題材を実写にするのか」という問いを私たちに突き付けてもいる。

 とりわけ、『シティーハンター』にはすでにアニメ作品が存在しており、多くのファンがいる。わざわざ実写にする意義はどこにあるのかと誰もが問うだろう。これまでの実写化の企画の中には、その問いに充分に答えていない作品も多かった。

 実写にする意義、それは「実写ならでは」の魅力で原作を表現すること以外にはないだろう。今日、アニメーション作品の表現力も高まり続けて意欲的な作品が数多く発表される中、実写制作者は「実写ならでは」の表現を突き詰める必要があると筆者は思う。そうでなくては、実写映画はアニメーションに対して競争力を失うだろう。

 その点で、本作は「実写ならでは」の魅力にあふれた作品だった。それは、一言で言うと「役者の肉体」である。鈴木亮平の肉体の説得力が本作最大の魅力と言っていい。アニメでもマンガでも表現しきれない生身の肉体に宿る「何か」を鈴木亮平は体現していた。

 デジタルによる加工技術が氾濫し、背景がまるごと写実的なCG映像だったとしても、人が実写映画を実写として認識するのは、役者の存在によってである。カメラの前には生身の肉体を持った役者がいる。その確からしさが実写を実写たらしめている。

 鈴木亮平の肉体から繰り出されるアクションの一つひとつに驚異的な説得力がある。例えば冒頭、半グレ集団を制圧する時の所作だ。格闘術もさることながら、相手の銃から銃弾を抜き使用不能にする手慣れたこの所作が、この男の日常を象徴している。普段からこのような荒事の世界に身を置いているということが、この動き一つに宿っている。

 本作は、そんな細かい所作の素晴らしさに満ち溢れた作品だ。映像とは動きを表現することこそがその本分で、この映画は見事な動きの積み重ねが映画を面白くするということを証明している。

 CGでもアニメーションでもできないこと。それは、役者が生身の肉体でカメラの前で起こす奇跡以外にはない。この映画の鈴木亮平にはそれがある。実写でなければ表現できない色気と動きを見事にやり遂げているのだ。

 実写映画を作ることの意義は、実写でしか表現できないやり方で原作が持つ魅力を表現することだ。その本懐をやり遂げたからこそ、この作品は成功なのだ。長年、実写化は原作ファンの心配のタネとされてきたが、本作は「実写化」に対する信頼度を一段引きあげる稀有な一本となった。

■配信情報
Netflix映画『シティーハンター』
Netflixにて独占配信中
出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、華村あすか、水崎綾女、片山萌美、阿見201、杉本
哲太、迫田孝也、木村文乃、橋爪功
原作:北条司『シティーハンター』
監督:佐藤祐市
脚本:三嶋龍朗
エンディングテーマ:TM NETWORK「Get Wild Continual」(Sony Music Labels Inc.)
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix)
プロデューサー:三瓶慶介、押田興将
製作:Netflix
制作:ホリプロ
制作協力:オフィス・シロウズ
原作協力:コアミックス
©北条司/コアミックス 1985

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