『虎に翼』ぶつけ合った弱音と怒り 伊藤沙莉「嫌な感じでいい」から伝わる心の距離
『虎に翼』(NHK総合)第3週ラストにて、寅子(伊藤沙莉)、よね(土居志央梨)、涼子(桜井ユキ)、梅子(平岩紙)、香淑の5人は、無事女子部を卒業し、明律大学法学部に進学することとなる。
第15話では、女子部2年生として過ごす昭和8年秋から卒業を迎える昭和10年まで時間が飛ぶことになるが、ここで描かれるのが「志を同じくする仲間」だということ。これは法廷劇「毒饅頭殺人事件」の再検証のため寅子たちと一緒に饅頭を作り、同級生を見つめていた母・はる(石田ゆり子)が感じたことであり、たとえ法廷劇の判例が学長によって書き換えられていたとしても、今日のこの場は無駄ではなかったと、はるは寅子、よねらに告げる。
この第15話で印象的なのは、花江(森田望智)の存在だ。第3週全体としても、香淑に「女中さん」と言われたり、寅子から「義理の姉」と紹介されていた花江。寅子たちが議論する姿を見て、疎外感が涙となって頬を伝う。独りぼっちで、この輪には入れない、“闘わない女”側なんだと。
「弱音を吐く人をそのまま受け入れることのできる弁護士に、居場所になりたい」という寅子に、涼子、梅子、香淑がそれぞれの弱音を吐いていくが、その流れから花江も義母がいつまでも料理を褒めていくれないことを弱音としてぶちまける。確かに砂糖を足す台所でのシーンが何度もインサートされていたが、その何気ない一言が花江を傷つけていたとは、はるは思いもしていなかっただろう。
いつ仕事先から帰ってきていたのか、ここで寅子の兄で、花江の夫である直道(上川周作)が登場。涙を拭う花江に颯爽と寄り添い、嫁と姑が顔色を窺い伺いながら過ごしているのであれば、この家を出ていくことがいいのではないかと直道は提案する。とんちんかんなことを言うことの多い直道だが、「思ってることは口に出していかないとね」と今日は何かとまともなことを言う。
法という武器を、盾をもっている寅子たちを描きながら、同時に花江のような闘わない、闘えない女性側にもスポットを当てた第15話。猪爪家を後にする際、涼子がお付きの玉(羽瀬川なぎ)に「あなたがそばにいてくれていつも救われているのよ」と感謝を告げることは、きっと弱音を吐くことのできない玉に涼子が自ら寄り添った場面に思える。誰一人置き去りにしないという信念のような思いを感じる回だ。