『ジョーカー』非公式パロディ映画が北米公開 ジョーダン・ピール製作の復讐アクションも

『ジョーカー』非公式パロディ映画が北米公開

 公開前から一部で大きな話題を呼んでいた映画が、満を持して北米での一般公開を迎えた。DCコミックスの人気ヴィラン・ジョーカーに基づく非公式映画『The People’s Joker(原題)』が、4月5日にニューヨークのIFCセンターで公開されたのである。

 ワーナー・ブラザース&DCコミックスの許諾を得ることなく製作された本作は、コメディが非合法化された世界で、ゴッサム・シティ唯一のコメディ番組に参加できなかった主人公のジョーカー・ザ・ハーレクインが、違法のコメディアンたちとコメディグループを結成し、街を司る“ケープド・クルセイダー”(バットマンの別名である)と対決する物語だ。

The People's Joker - Trailer

 監督・脚本・主演は、編集者・作家・俳優のヴェラ・ドリュー。トランスジェンダー女性としての経験をDCコミックスのパロディに融合した「半自伝不条理ダークコメディ」で、Rotten Tomatoesでは96%フレッシュという高評価を獲得した。大手映画館チェーンでの上映は予定されていないものの、次の週末には少なくとも北米85館に上映を拡大予定だという。

 もともと本作は、ジョーカーやバットマンをはじめとするDCヒーローとヴィランたちを非公式に登場させたことで、2022年のトロント国際映画祭でプレミア上映された直後、ワーナーの異議申し立てにより「権利上の都合」で全上映がキャンセルされた問題作。しかし、翌2023年にはOutfest(ロサンゼルス・ゲイ・レズビアン映画祭)でも上映され、このたび一般公開が実現した。

 気になる権利問題については、配給側の弁護士がワーナーとの協議を進めており、「友好的な話し合いが行われている」とのこと。万事解決した暁には日本公開も実現することになるだろうか。

 もちろん『The People’s Joker』はインディペンデント映画であり、興行的なポテンシャルは未知数。しかし、今週の北米映画興行には本作以外にも野心的な新作が複数登場している。

Monkey Man | Official Trailer

 4月5日~7日の週末ランキングで第2位に初登場したのは、『ジョン・ウィック』シリーズの製作陣がプロデュースした新作復讐アクション『Monkey Man(原題)』。共同プロデュースには『ゲット・アウト』(2017年)や『NOPE/ノープ』(2022年)の映画監督ジョーダン・ピールが名を連ねた。

 本作は『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)や『グリーン・ナイト』(2021年)などで知られる俳優デヴ・パテルの長編監督デビュー作。脚本・主演を兼任し、パテル演じる主人公のボクサーが、自分からすべてを奪った闇社会への復讐に乗り出すストーリーを描き出した。

 本作は3日間で1010万ドルを記録し、事前の予測値である1200万ドルをやや下回っている。しかしながら、配給のユニバーサル・ピクチャーズは、Netflixが本作の配給権を手放したあと、ピール率いるMonkeypaw Productionsの支援を受けて配給権を1000万ドルで獲得したという経緯。ビジネス的にはまずまずの出発点と言える。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコア87%・観客スコア83%と、監督デビュー作としては上々の成績。観客の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」評価となっているため、これが今後の興行にどう結びつくかがポイントとなりそうだ。日本公開が待たれる。

『オーメン:ザ・ファースト』©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 第4位には、伝説的ホラー映画『オーメン』(1976年)の前日譚『オーメン:ザ・ファースト』も初登場。3日間で836万ドルを記録し、『Monkey Man』と同じく予測値の1400万ドルを大幅に下回ってのスタートとなった。残念ながら、第3位の『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』にも敗れている。

 しかし、こちらもビジネス的にはひと事情あり、配給の20世紀スタジオはもともと本作を劇場公開作品ではなく、米Huluでの配信リリース作品として計画していた。2023年の脚本家&俳優Wストライキを受け、映画館の作品不足を懸念して、厳しい戦いを承知の上で劇場公開に踏み切ったのだ。したがって、作品自体の製作費は3000万ドルとかなり抑えめ。争点は『オーメン』の権利を4億ドルで獲得したことだが、その成否はこの一作だけにかかっているわけではない。

 本作はイタリア・ローマの教会を舞台に、若いアメリカ人修練生のマーガレット(ネル・タイガー・フリー)が、とある少女をめぐる怪異に対峙するなか、教会の恐るべき陰謀を知る物語。Rotten Tomatoesでは批評家スコア78%・観客スコア64%と、賛否両論となりやすいホラージャンルとしては評価面も健闘している。監督・脚本は新鋭アルカシャ・スティーブンソン。日本でも4月5日より公開中だ。

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